【雪夜を彩る灯の花】山形屋本店の絵ろうそく

會津絵ろうそく。

そう聞いて、雪夜の街を照らす柔らかな和ろうそくの灯りを思い浮かべる人はどのくらいいるでしょう。

今では生産地も限られ、なかなか日常ではお目にかかる機会のない昔ながらの和ろうそく。

そこに季節の花の絵をあしらった「絵ろうそく」は、ここ会津を代表する工芸品のひとつであり、毎年2月第1週の土曜日とその前日の2日間にわたって開催される

【会津絵ろうそくまつり -ゆきほたる-】

の主役でもあります。

今回はそんな絵ろうそくを江戸時代から作り続けている絵ろうそく店の一つ、【山形屋本店】の薄(ウスキ)さんに、お話を伺ってきました。

山形屋本店のあゆみ

今回取材させていただいた山形屋本店の店主、薄さん。
仕事道具やろうそくの材料に囲まれた作業場で撮影させていただきました。

—今日はよろしくお願いします。

—山形屋さんは、もうずっと昔からここで絵ろうそくを作ってこられていますが、いつ頃からなんでしょうか?

薄さん:江戸時代の中期頃からなので、大体250年前から。この同じ場所でやっています。

元々ろうそくを作っていて、そこから油なども扱うようになりました。

こちらは大正時代の看板ですが、石油、椿油、胡麻油なども売っていたようです。

大正時代のお店の看板。確かにろうそく以外にも椿油や胡麻油など油類の記載が多い。

—大正時代!この時すでに石油を扱ってらしたんですね!凄い。

薄さん:そうですね。

山形屋さんの歴史を刻んできた、昔の台帳なども店内に展示されている。
昔の商品見本。現在の絵ろうそくと比べると絵が淡い色合いに見えるのは、経年変化のせいもあるが絵付けの画材などが今とは異なるためでもある。

薄さん:その後、ろうそくの原料になるハゼロウ(櫨(ハゼ)の実から作られるロウ)が化粧品の口紅の原料にも使われていたこともあって、化粧品の販売も手がけるようになったようです。

—なるほど、それで店内には化粧品も置かれているんですね。

こちらがろうそくの原料になるパラフィンワックス(一般的なロウソクの原料)とハゼロウ。
左の白い塊がパラフィンワックス。右のクリーム色の塊がハゼロウ。ハゼロウの見た目はチーズのようで、美味しそう。

なんと。ろうそくから始まって、油、化粧品と時代の需要に合わせて色々なものを手掛けてこられたのですね。

しかし何を手掛けるようになっても、ろうそく屋であることは譲れない。そんなろうそく屋魂を感じる店内には、色鮮やかな絵ろうそくが今日もたくさん並んでいます。

会津のろうそくの歴史

店内で販売中の絵ろうそく。1匁(もんめ)は3.75グラム。
写真の3匁のろうそくで、燃焼時間は大体30分くらい。
こちらはキャンドルタイプの絵ろうそく。赤べこや起き上がり小法師など会津らしい絵付けはお土産にぴったり。

—先ほど原料のパラフィンワックスとハゼロウを見せていただきましたが、今、店内に置かれている絵ろうそくのロウは何を使っているんでしょうか?

薄さん:パラフィンワックスとハゼの実から作ったハゼロウを合わせて使っています。

会津のろうそくの原料は、もともとは漆の実なんです。漆の実の植樹栽培から始まって、それが室町時代の終わりくらいですね、蘆名氏が治めていた時代。

そこからできた漆の実からろうそくが作られていた。

そして蒲生氏郷の時代に、氏郷公の出身地である近江から技師や木地師を連れてきて、そこから漆を使ったろうそくと漆器が盛んになっていったそうです。

昔はこの漆の実からろうそくを作っていた。こちらも店内で見ることができる。

—今の絵ろうそくの絵付けはアクリル絵具ですか?

薄さん:これは水彩絵具ですね。

—昔は何で描いていたのでしょうか?

薄さん:昔は日本画を描くような顔料、岩絵具なんかで描いていたようです。

現代の絵付けはとても色鮮やか。

山形屋本店のこだわり

店内に飾られた、絵ろうそく製作工程のイラスト。

実は同じ絵ろうそくでも、店ごとに微妙に違いがあります。ロウの割合やろうそくの形、絵付け、、、ポイントは色々ありそうですが、山形屋さんのこだわりはどこにあるのでしょうか。

—ズバリ、山形屋さん的こだわりのポイントを教えてください!

薄さん:うちは色彩の鮮やかさですね。はっきりした色使いで鮮やかに、というところを意識しています。それと絵柄を描いた後にロウでコーティングをほどこしています。そうすることで光沢が出るのと、その工程で色が均一になっていく。そういった技術があるので、仕上がりが綺麗になります。

—山形屋さんではあえて水彩で描いて、コーティングで綺麗に仕上げる、と。

素敵なこだわりです!

山形屋さんでは絵付け体験も行っていますので、絵付けに興味を持った方は是非一度、絵付け体験に参加してみてくださいね。

山形屋さんでは絵付け体験も行っています。
日本語を入れると5ヶ国語での説明書きも。

山形屋本店と絵ろうそくまつり

冒頭でも少しご紹介したように、会津では毎年2月の第1週の土曜日とその前日の2日にわたって、絵ろうそくまつりが開催されます。

冬の夜に柔らかい光を放つたくさんのろうそくが鶴ヶ城をはじめとする会場や沿道に灯される、この素敵なイベントの主役はもちろん、山形屋さんや市内の絵ろうそく業者の皆様で作る絵ろうそくです。

令和2年の絵ろうそくまつり案内。毎年、このお祭りに合わせて絵ろうそくの絵付け体験も行われています。

—実はこの絵ろうそくまつり、私も何度か見に行っていて、本当にたくさんのろうそくが使われているなぁと思っていたのですが、一回の絵ろうそくまつりで使われるろうそくは大体何本くらいなのでしょうか?

薄さん:絵ろうそくまつりと言っても使われるろうそくも色々あって、和ロウソクもあれば普通のパラフィンワックスのものもあり、全部で1万本くらいです。

—1万本!凄い数ですね。山形屋さんはそのうちの何本くらい作られているんですか?

薄さん:約8百本ですね。

こちらは2019年の御薬園会場の様子。

約8百本。口にするのは簡単ですが、絵ろうそく作りは手作業です。8百本の絵ろうそくを手作りするなんて、素人には想像も及ばないほど大変な作業なのだと思います。

会津の冬を彩る絵ろうそくまつりは、こうした伝統を繋ぐ皆様の努力によって支えられているのですね。

若者・よそ者へのメッセージ

—最後に、このあいづっぺでぃあは会津に関わる若者、よそ者による情報発信サイトですので、是非若者、よそ者の皆さんへのメッセージをお願いします。

薄さん:若者やよそ者の方には地元の人間にはない感覚があり、だからこそ気付く、見つけられる新しい魅力があると思いますので、是非その感覚をどんどん発信していってほしいと思います。

そして、私達もその感覚を共有することで新しいものを作っていきたいと思います。

—ありがとうございました。

長い伝統の中で、その時代のニーズを常に意識したものづくりを続けてきた山形屋本店さんならではのメッセージ。

きっとこれからも地域、若者、よそ者、様々なニーズをくみ取り、伝統を次に繋いでいってくださることでしょう。

今日は本当に、ありがとうございました。

取材先情報

店舗名山形屋本店
住所〒965-0034 福島県会津若松市上町2番34号
電話番号(0242)22-5769
URLhttp://rousoku.com/index.html
オンラインショップhttp://rousoku.com/cargo_syohin/index.html
石川麻愛

石川麻愛

東京⇔会津を行ったり来たり。
鶴ヶ城が大好きなよそ者ライターです。