2019年の春から会津美里町の古民家に家族で移住し、2019年12月15日に「自家製天然酵母パンいわなみ家」をオープンした、店主の岩波聡子さんにお話を伺いました。
福岡県出身、東京、福島市を経て、家族で会津美里町にIターン移住したきっかけ、語りだしたら止まらないという自家製天然酵母パンの魅力についても聞いてみました。
もしかすると、あなたの「パンの概念」が変わるかもしれません。

自家製天然酵母パンいわなみ家 店主 岩波聡子さん(右)
あいづっぺでぃあ取材班 奥田美咲(左)

移住のきっかけ 子どもたちに、四季を感じられる故郷を

―――会津美里町に移住する前は何をされていたんですか?

もともと私は福岡県の出身で、東京で新聞社に勤めていました。
そこで、同じ会社で報道カメラマンをしていた夫と知り合い、結婚。
その後、東日本大震災が起きました。夫が震災の取材をしたくて、福島市の支社へ転勤を希望。その後、夫は福島を撮り続けたいという想いから、フリーのフォトグラファーの道を選びました。
そのころ私はすでにパンが好きで独学でパンを焼いていたんですが、天然酵母のパンをもっと学びたくて、会社を退職してパンの学校に行ったり、パン屋さんで修行を積んだりしました。
そして、自宅でパン教室を開いてパンの作り方を教えるようになりました。

―――聡子さんはパン教室、ご主人は震災を撮るフォトグラファーと、福島市に住んでいても仕事や生活は困らなかった思いますが、そこからあえて会津美里町に移住したのはなぜですか?

子どもたちに、ふるさとを作ってあげたかったからです。

次に住むところは賃貸ではなく、子どもたちが巣立ってもいつでも帰ってこられる一軒家がいいと思いました。
そう考えて、福島市よりも一軒家が持ちやすくて、自然が豊かで、夫の故郷である長野の風土に近い場所を探しました。

会津地方は、四季がはっきりしているのがいいですよね。
蕎麦がおいしくて、四季の山の色がきれいで、冬が長いけど、やっと春が来たらみんなワクワクしながらホームセンターで野菜の苗を買ったりとか・・・。

私の生まれた九州は雪が積もらないので、子供たちに雪を見せてあげたり、四季を感じたりして成長していってほしいと思ったんです。

天然酵母パンの醍醐味は、”プクプク””ふっくら”すること

焼きたてのチョコクランベリーベーグル

――― 会津はお子さんが自然の中で伸び伸びと成長できる環境だと思います。 聡子さんがそもそもパン作りにハマったのはどういうきっかけですか?

もともと実験好きな性格だったんですが、水にフルーツを漬けておくと発酵してブクブクと泡立ってくるのを見ているのが面白くて!
フルーツって皮に酵母が付着していて、それを水に入れると発酵するんです。その酵母をパンに入れることでパンがふくらむんですが、そのどんどんふくらんで変化するのが不思議で楽しいんです。
そのうち、どんな酵母を使ったらどのくらいふくらんで、パンの断面はどうなるのか、研究していくうちにハマりましたね。

発酵させたブドウ。表面にぷくぷくと泡が立つ。

―――普通のパンと天然酵母のパンの違いはなんですか?

一般的なパンはイースト菌で発酵させるので1時間で3倍位にふくらむんですが、天然酵母は醗酵するパワーが弱いので、ふくらむまでに8~10時間もかかります。
でも、醗酵に時間がかかるっていうことは、小麦粉のなかに水が入っていく時間が長いので、それだけ小麦の味が豊かになるんですよ。
例えば、お米はちゃんと吸水させないで炊くとパサパサのごはんになりますよね?
パンもそれと一緒で、小麦も十分に水に触れさせておくと、本当に小麦の一粒一粒に水が浸透した状態の小麦の味が感じられるおいしいパンになるんです。
それが、天然酵母を使う理由です。

朝食にぴったりの山型食パン 。二次発酵を終えてふっくら。

ふくらむのに時間がかかるのは、私にとっては都合がいいことでもあります。
夕方に仕込んでおいて、子供と遊んだり寝かしつけて、朝起きたらちょうどふくらむので、普通のパン屋さんみたいに夜中に早起きしなくていいので、生活リズムに合っていていいですよ。

パンは焼きたてがおいしい?固いとマズい?それは食べ方の問題です。

パンドカンパーニュ(シンプルな田舎パン)

―――天然酵母のパンの美味しさを広めたくて、パン屋さんを始めたんですね。

そうですね。私の作るパンは、パンドカンパーニュやベーグルなど、ハード系のパンが多いんですが、日本人って柔らかいパンが好きな傾向がありますよね。
日本ではそのまま食べる菓子パンや惣菜パンが流通しているで、パン本来のおいしい食べ方を知らない人が多いのかな。
だから、ハード系のパンもそのまま食べちゃって、「固い」「食べにくい」と感じて敬遠しがちなんですけど、本来は固いまま食べるものではないんですよ。
冷蔵庫に入っている冷えたご飯をそのまま食べる人はいないじゃないですか。
パンだって同じです。

プレーンなベーグルなら、具をサンドしたり、クリームチーズをつけたりして食べますし、どんな高級パンでも時間が経つと必ず硬くなるものですが、霧吹きで水をかけてトーストすれば香ばしくておいしくなります。
冷凍すれば日持ちもしますしね。

私の作るパンを食べてもらって、ハード系のパン・ド・カンパーニュやベーグルの本当の美味しさを知ってほしいです。

パンを買っていただいたお客さんには、パンのおいしい食べ方がわかるように、パンの食べ方を紙に書いたものを渡しています。

少しでも多くの人にパンの本当のおいしさを伝えたいんです!

―――いわなみ家のパンのこだわりを教えて下さい。

今って、全国的にパンフェスなどが増えて、パンブームですよね。
国産小麦を使っているとか、有機栽培とか、オーガニックとか、耳当たりはいいんですけど、本当のパンの美味しさは原材料だけでは計れません。

私はやっぱり、「パンはふくらんでこそ」だと思っています。

焼く前のベーグル生地をさっと茹でる

いい小麦と水と砂糖とバターと塩で作れば、おいしいパンは作れます。
でも、 しっかりとふくらんだ状態でなければパンの本来のおいしさは味わえません。

私もパンを作り始めた 10年くらい前は試行錯誤していて、目が詰まっていて嫌な酸味のあるパンしか作れませんでしたが、今は本当にふっくらした理想に近いパンを作れるようになりました。

世の中にパンは溢れていますが、食べ比べてみて本当に好きなパンを選んで欲しいです。
ゆったりとした気持ちで、小麦の香ばしさを感じながら味わってみてほしいですね。

会津美里町は、 発酵・醸造の文化が根付き始めた場所

―――会津美里町に住んでみて、地域とのつながりはどうですか?会津美里町のいいところは?

パン屋のオープンの1週間前にご近所の方を呼んで、無料のパン試食会をしました。
近所の人はみんないい人ばかりで、お店の駐車スペースが混み合ったときにお隣さんの敷地を貸してもらえたり、野菜をたくさんもらったり、お世話になっています。
最近、子供の学校のお友達も「お母さんがパン屋さん」と認識してくれていて、この地域でパン作りを仕事として認めてもらえてきているのが嬉しいです。

会津美里町はものづくりが盛んな地域です。
本郷焼もありますし、新鶴地区にはワイナリーがあって、発酵・醸造の文化が根付き始めた土地だと思います。
ワインやチーズと同じで、パンも醗酵させて作るので、似たようなプロセスのものとはつながりがあって相性がいいんです。

―――最後に、会津に興味のある若者・よそ者にメッセージをお願いします。

会津は田舎だけど、やりたいことがあれば周りは協力してくれます。
私がお店をオープンしたときも町役場でチラシを増やして配ってくれたり、人と人とのネットワークをつないでくれたりしてもらえました。

やりたいことを口に出していれば、協力してくれる人が必ずいます。

会津美里町は、移住者を積極的に受け入れる体制がありますし、子育ての補助金などもあります。
移住を考えている方や、会津で仕事をしてみたい人は、うまく活用してみてほしいです。

末永く地域に愛されるパン屋さんを目指して

天然酵母パンの魅力を嬉しそうに語ってくれた岩波聡子さん。
今後の目標は、「まずは15年、そして末永く地域に愛されるパン屋さん」だそうです。

パン作りへの情熱ももちろんですが、地域の人とのコミュニケーションをうまく取りながら、古民家も夫婦でDIYしてしまうアクティブさが魅力的だと感じました。

現在、自家製天然酵母パンいわなみ家の開店は、毎週火・日の2日のみ。
ひとりで作れるパンの量は少ないため、開店から30分で売り切れてしまうそうです。

予約は行っていないので、開店時間前に余裕をもって来店してみてくださいね。

自家製天然酵母パン いわなみ家(いわなみけ)の詳細情報

住所: 〒969-6273 会津美里町八木沢太子堂東2845
連絡先 : eggsatoko@gmail.com
営業時間 :毎週火曜日と日曜日 午前10時30分〜なくなり次第終了
ホームページ: https://iwanamike.com/
パン教室は不定期で開催。詳細はホームページまで。

Instagram:https://www.instagram.com/iwanamikesatoko/