取材記事

「会津はひとつ」人生100年時代に向けた会津の広域連携とは【会津地方振興局 高野局長】

現在、会津17市町村が広域で連携するための様々な取り組みが行われています。

2021年に行われた「平成23年7月新潟・福島豪雨災害からの10年『会津の今』シンポジウム」や、各市町村を巡回したパネル展は記憶に新しいのではないでしょうか。

2022年には、会津13市町村(南会津4町村を除く)の首長が全員集まり、日本のアウトドア総合メーカー 株式会社モンベルと「人生100年時代 会津・モンベル広域連携共同宣言」が行われました。

また、福島県で発行されている新聞などで「会津DX日新館」という言葉をよく見かけることでしょう。

「会津はひとつ」のかけ声のもと、これらの企画を主導されている、福島県地方振興局の高野局長に、お話を伺いました。

今回は喜多方市出身で東京と会津の2拠点で活動するライターの古川が、鶴ヶ城近くの合同庁舎でインタビューをさせて頂きました。

合同庁舎って?会津地方振興局って?

ーーー私たちにはなじみのない言葉ですが、会津地方振興局とはいったいどのようなところなのですか?

まず合同庁舎とは、事務所の寄せ集めのことで、県の機関が合同で入っています。会津地域のことは合同庁舎内で出来るようにしている福島県庁の出先機関で、いわばミニ県庁のようなものです。

人々の暮らしのなかで、地域の課題を解決したり、住民の利便性を向上させるための住民サービスというのは、まず市町村が行うのが基本なんです。

でも例えば、湯川村に住んでいる人が、喜多方市に勤めていて、子供は会津若松市の学校に通っている、病院は坂下町に行っている、という感じで、日々の生活は、ひとつの市町村で終わらないですよね。

複数の市町村に生活圏が及んでいるので、生活圏ごとに広域で調整するところが、ここの福島県の会津地方振興局です。

福島県は7つの生活圏に分かれているんです。県北地域(中通り北部)、県中地域(中通り中央部)、県南地域(中通り南部)、会津地域(会津北部・中央部)、南会津地域(会津南部)、相双地方(浜通り北部)、いわき地方(浜通り南部)の7つです。

会津が2つに分かれているのも、例えば、檜枝岐村と会津若松市の人が同じ生活圏かというとちょっと違いますよね。

ひとつの生活圏という範囲で、福島県は7つに分けてあって、県の出先機関のひとつが会津地方振興局です。

福島県庁は59市町村が対象ですが、会津地方振興局は南会津の4町村をのぞく、会津地方の13市町村が対象です。

高野局長の見る会津とは?

ーーー喜多方市出身の私からすると、中心地の会津若松市だけでなく、「会津はひとつ」と広域で会津を盛り上げる動きがあることはとても嬉しいことに感じます。

会津という言葉からは、どうしても戊辰戦争の話が出てしまうんです。戊辰戦争の前にもいい話が一杯あるんです。

少し遡ると、会津伝統産業の礎を築いた名家老の田中玄宰(たなか はるなか)さんの話や、日新館もあります。

さらに古墳時代まで遡ると、大塚山古墳には三角縁神獣鏡がありました。これはこの時代に、大和政権と会津との間で人の動き、物の動きがあったということになります。このことはとても大きいですよね。

そこから会津を見る必要がある。

私が会津地方振興局の局長として会津に来てからやっていることはそこなんです。

歴史と文化、そこをふまえて、会津地域全体を見ていかないとならない。

私が注目しているのは会津五街道です。越後街道、下野街道(会津西街道)、白河街道、二本松街道、米沢街道、会津から5方向に街道が延びているのは日本橋と同じなんです。

会津に人が集うような形にちゃんとなっているんですよね。歴史的に見ても、会津から人の流れ、ものの流れがあった。

近現代になってからも、例えば、三島町や喜多方市の桐、今でも国産の桐の半分は会津産の桐です。かなり少なくはなっていますけど。

また、只見川の電源開発では、ダムの建設は平成元年まで続きましたが、あの只見川の電源開発がなかったら、日本の高度成長はなかったと思いますよね。

電力というもので日本を支えてきたのも会津だし、そういうところの誇りは大事だと思っています。

東北の人はみんなそうですが、「なんにもなくて」っていいますよね。

でもなんにもなくて、でなくて、自分たちのところに誇りを持とうよということを皆さんに言っているんです。

会津に住んでいる皆さんが、誇りを持って会津に暮らして、豊かで、自分らしい人生、100年時代を笑顔で健やかに暮らしていけるようにしたい。

人生100時代を誇りを持って生きるために

ある資料によると、2007年生まれの人たち、今、高校1年生ぐらいですよね、半分が107歳まで生きるという研究があるんです。

そうなったときに、ベッドの上で100歳の誕生日を迎えるようなことはしたくない。

100歳の誕生日を自分の足で立って、自分の目で見て、自分の手でケーキにフォークを出して、口に運ぶ。食べて美味しいって思える。そこで「おめでとう」という声が自分の耳で聞こえて笑顔になれる。

そんな100歳の誕生日を迎えられるような地域にしないとだめだよね、そういう地域に会津地域を持って行こうよ。というのが私と会津13市町村長の願いなんです。

会津にはこれまでの歴史、文化に育まれた風土、土地柄があります。

会津で生きる、会津の未来を作る、それに誇りを持って欲しい。

ただ、誇りってどう育むかというと、まず、自分を認める、地域を認める、自己肯定といいますかね、自己肯定が強まると自慢したくなるでしょ。

そうなると誇りが生まれてくるんですけど、誇りが生まれると、それを伝統として守ろうと思うじゃない。

伝統文化はやはり、誇りがあるから、みんなで力を合わせて守ろう、守っているだけでなく、さらに挑戦しようという気持ちも出てくるでしょ。

それは誇りがあるから。自慢するものがあって、誇りに感じるから挑戦する。

挑戦が続くと持続可能な未来に繋がる。そういう流れを生んでいくためには、広域連携という形でやらなければいけないよね。

そこで、「会津はひとつ」なんです。

会津はひとつで頑張ろうよ、というのがこのメッセージで、この2年間私が取り組んできたことなんです。

2022年12月17日のシンポジウムで配られた「会津はひとつ」のクリアファイル

会津17市町村が一緒に汗を流す「会津はひとつ」の取り組み

「会津はひとつ」という言葉は以前からあったのですが、実際に行政が「会津はひとつ」で何かをやったことはなかったんです。

一緒に仕事をする、一緒にイベントをする、それをやっていかなかったら、「会津はひとつ」がかけ声だけに思われる。

だから一緒に汗を流そうということを私は企画しました。

平成23年7月新潟・福島豪雨災害からの10年『会津の今』シンポジウム

ちょうど新潟福島豪雨災害から10年ということもありましたので、2020年4月から、それを振り返るための企画を行いました。

まずは新潟福島豪雨災害をちゃんと振り返って、災害からの教訓を未来につなげていこうというパネル展行いました。

南会津4町村も含めた会津17市町村、道の駅だとか、必ず集客施設がどの市町村にもありますよね、そこをリレー方式で全部、巡回したんです。

そこにまず、私と、市町村長がテープカット、そうすると、地元の新聞社2社が取材に来ます。あとは市政便りなどの広報誌にも載る。それを会津17市町村全部やるんです。

そうすると新聞にいつも出てくるよね、また高野局長とやっている、またやっているなんだ?で「会津はひとつ」だ、ってイメージがわいてくると思うんですよ。

最後には会津大学に内堀福島県知事にお越し頂いて、コロナ禍の状況であったので、会津17市町村にZoomで参加して頂いて、みんなでシンポジウムを行いました。

人生100年時代 会津・モンベル広域連携共同宣言

2022年には、世界でも有名な日本のアウトドア総合メーカー 株式会社モンベルと「人生100年時代 会津・モンベル広域連携共同宣言」を行いました。

モンベルと会津13市町村と県とで広域連携指針に基づいて共同宣言をしたんです。各市町村それぞれに協定を結びました。

会津13市町村の首長の予定を合わせて一堂に会するのは難しいんです。

だけどこの日は全員集まろうと日程調整をして集まったんです。「俺たち本気でやるよ」というところを、住民の皆さんに示したいというところで、こういうことをやるのは全国初です。

会津地域課題解決連携推進事業「会津DX日新館」

会津地域は高齢化も深刻だし、広域だし、いろいろな地域の課題がありますよね。

そこで学生に地域に入っていってもらって、地域の課題を発見してもらう。

フィールドワークが得意な福島大学と会津短大が「地域課題」を発見します。その課題をデジタルで解決するのはコンピュータ専門大学の会津大学の役目です。

大学間の連携をすることで課題解決をする。

会津大学でシステムまでは作れます。それを社会の枠に納めるには企業の力が必要で、そのためには行政からの支援が必要ですよね。

そこを会津大学発ベンチャーや会津の企業の皆さんにその仕事をして頂いて、行政で支援して、地域で回るように、産学官連携と言われる形の組織にしたものが、会津DX日新館なんです。

地域の課題を発見するために、若い学生が地域に入っていくというだけでみなさん元気になりますよね。

若い人が入っていくと、私たち公務員、大人に話さないことをいろいろ話してくれます。

ただ、若い人に話せないことは我々に言ってくれているんですよ。

だから学生たちと私たちもたくさん話して、地域の課題を発見して解決策をいっしょに考える。

学生だけでなく、先生にも入ってもらって、学会で発表してもらう。学生にも卒論で発表してもらう。会津はそういった取り組みの先進地域なんですよね。

そして、よければその地に住んでもらいたい。2022年の取り組みで一人、奥会津地域に就職した学生がいます。

地域の誇りを発見してもらうためのシンポジウム

2022年11月には会津地域自治体連携シンポジウム「7人のマスコミが見た会津」を行いました。また、12月には「『会津の女性』がみる会津の未来」を行いました。

地域の誇りを醸成させるのに、会津を代表される皆さんの話を聞くことは有益だと思い、シンポジウムを行いました。

会津DX日新館の成果報告会なども含め、会津大学で多数のシンポジウムを行っています。

会津の市町村をつなげるのが会津地方振興局

市町村と一緒に、地域の自治をやるのが地方振興局。

だから私は地域の方との語り合いもやります。三島町のサイノカミに行って点火したり、住民とお話ししたり、喜多方のレトロ横町で浴衣を着て踊ったり、そういうこともやっています。

なかなか市町村同士で、会津13市町村とか南会津4町村を含めた、会津17市町村が一緒にやろうと声を掛け合おうというのは難しいでしょ。

学校だって、生徒会があるから学年を通して、学級を通して、文化祭がやれるのであって、我々は学校でいうところの生徒会の役割ですね。

「会津はひとつ」のデザインは、私がデザインし揮毫したものです。丸い円の中に「会津はひとつ」という文字が入っています。

この円は会津地域を表します。だから、「会津に暮らす私たちがひとつの輪になって、『会津はひとつ』と一丸となって、輝く会津の未来をつくっていこうよ」ということです。

お忙しい中、お時間を取っていただき、地方振興局のことから、様々な取り組みまで、分かりやすく丁寧に教えていただきました。

今回はお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。

ABOUT ME
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古川恵子
1981年喜多方市出身。福島大学卒。2004年から東京都在住。あいづっぺでぃあには運営側で関わりつつ、ライターとしても活動しています。 普段は自営業主様、小規模事業者様向けに、ホームページ制作、ワードプレス講座、情報発信事業などを行っています。