取材記事

“「出来る」を叶える”子育て支援で、夢を語り合える世界を。【NPO法人Lotus】

今回インタビューしたのは、NPO法人Lotusの代表理事・山口巴さん。

2010年に保育園を立ち上げてスタートした同団体は「こどもたちの笑顔のために、すべてのお母さんをひとりにしない」という想いを軸に、多角的な視点から子育て支援を提供しています。この約13年で保育園・屋内遊び場・コミュニティカフェ(ものづくり体験の場)・出張木育キャラバンなどを立ち上げ、現在もさまざまな活動を展開中。

そんな子育て環境の支援や改善に挑み続ける山口さんに、お話を伺います。

木を体感する”まちの駅”「Lotus Wood Village」へお邪魔しました

異色の経歴だからこそ。

笑顔が素敵な山口さんです

ーーーLotusの活動を始める以前から、教育の分野には携わっていたんですか。

私はもともと金融会社にいて、17年ぐらい勤めていたの。管理職にもなって、プライベートでは出産もしたんだけど、やっぱり働きながら育てるって簡単なことじゃなくてね。私の場合は、お金が1円でも合わないと帰れなかったわけよ。子どもや保育園の事情は関係なく、単純に「計算が合わないから帰るな」って話なんだよね。

ーーー仕事と子育ての両立は、きっと大変ですよね。

だから、そういう自分みたいな人が困らないような、24時間土日祝日対応の保育園を設立したのが、今の活動のスタートになってるね。

ーーーご自身でつくっちゃったわけですか。パワフルですね。

何も難しいことはなくて、困っている人がいたら困らないようにするためのものを考える、ってのが私そもそも好きなのよ。

ーーー教育とは離れた業界にいたからこそ、見えてくるアプローチもあるんでしょうね。

うん、それはあると思う。

取材場所のLotus Wood Villageには木の香りが漂います

ーーー現在の活動について教えてください。

園長を務める「Lotus保育園」や屋内遊び場「木育広場もくれん」、モノづくり体験&カフェ「Lotus Wood Village」などLotusグループの施設の経営がおもな仕事。子どもや学生に限らず、お父さんお母さんの世代の教育を支援して喜んでもらえるよう、日々の活動に励んでいてね。

そんな中で中学生や高校生の出前講座・課外授業にも携わっていて、子育て分野の担当として、幼稚園や学校の先生になりたいっていう生徒を受け入れているの。堅苦しく勉強して頭に詰め込むっていうよりかは、実際に現場で体験して感じてもらうことを大切にしてるかな。

ーーーそうなんですね。学生にとっても印象に残ると思います。

ついこの間は、高校1年生の頃から2年間面倒を見てきた子たちの課外授業の成果発表会でね。みんな立派に発表してて、私が教えたことがちゃんと伝わっていたってことも分かって、もう感動しちゃった。

ほら、今の子たちって反応が薄いでしょ?どうも苦手なのか言葉や表情には上手く出せないんだけれども、文章やプレゼン資料にするとちゃんと理解して考えていたみたいで。嬉しかったなあ。

「出来る」を叶える、プラス思考。

優しい語り口ですが、言葉の端々に強い信念を感じました

ーーーLotusのWebサイトを拝見したとき“「出来る」を叶える”という言葉が印象的だったのですが、どのような思いが込められているのでしょうか。

会津というか日本全体の教育には、「あるべき論」があるじゃない?たとえば、単純に自分が好きなことや興味あることに取り組もうとして「これをやりたい」って言っても、「お前にはできっこない」「頑張ってもムダだ」って、やれない理由を植え付けられる雰囲気があるでしょ。出鼻をくじいてくるっていうか。

ーーーはい、分かります。自分が子どもの頃にもそんな風潮がありましたし、今もあると思っています。

そうだよね、それに私は変だなと違和感を抱いていて。だからそうじゃなくて、子どもに「どうすればやれるか」っていうのを教えたり、なんなら一緒に考えたりするのが好きだし、絶対その方がワクワクするじゃん。

ーーーそう思います。

自分の夢を口に出すことを恥ずかしく思う子どもたちが増えていて、もったいないなあって思うよね。だって夢はさ、叶えられるかどうか分からないから夢なわけで、私はそれを語り合いたいし、互いに認め合える仲間たちだけで一緒にいたいなあって思うの。

Lotus Wood Villageの明るく温かい内装にはグリーンが映えます

ーーーだからこその“「出来る」を叶える”、とても素敵な言葉ですね。山口さんはもともとそういった考え方だったんですか。

いや、もともとではなく、Lotusを創業してからだね。人を雇ったり経営を考えたりする中で悩むこともあって、脳科学のメンタルコーチの資格を取ったの。そもそもポジティブではあったんだけど、資格の勉強を進めていく中でもっともっと言葉や捉え方を前向きに変換して、プラス思考になったような感じ。“「出来る」を叶える”って言葉が生まれたのも、その頃だったね。

ーーーポジティブからプラス思考ですか。

そうそう。ポジティブのうちはね、根拠のない何かからただそう思ってるだけだったんだけど、プラス思考になると、自分にも他人にも責任を負えるようになってきたっていうか。そういう感覚かな。

ーーーなるほど、微妙に異なるんですね。プラス思考が原動力を生み出してくれるイメージでしょうか。

そうかもね。普段から「仕事嫌だなあ」とか「つらいなあ」とか思ったことないもん、私。くじけそうになっても“秒”で復活するね。

ーーー秒ですか、それはすごい。憧れちゃいます。

高校生との衝撃的な会話。

店内のさりげない遊び心

ーーー地域の子どもたちにとって、山口さんとの時間は刺激的だと思います。

この間は高校1年生の200人向けに講演をしてほしいと校長先生に頼まれて、その最後に「質問ないですか」って言ったらさ、とある男の子が「進学を考えているんです。でも海外で勉強や仕事をしてみたいとも思っているんです。どうしたらいいですかね」って言うの。

ーーー進路に悩んでいるんですね。

私はそれを聞いて「なんでどうしたらいいですかって考えんの?どっちもやればいいじゃん!」って答えちゃって。そしたらその男の子「ええ…?それでいいんですね」って驚いていた様子だったから「そうだよ!」って言ったんだけどさ。

ーーー衝撃的だったんでしょうね。

きっとそうだよね。その後に校長先生から頂いた手紙にも、そんなことが書かれてたなあ「どっちもやれ」って言った人はいなかったって。私の方こそ、今の子たちってそういう考え方で生きているんだって驚いたよ。そしてそのまま高校生活の3年を過ごしているんだと思ったら、もったいないよなあとも思った。

ーーー素晴らしいですね。僕も学生時代に、山口さんとお会いしたかったです。

理想の妄想。

終始にこやかにお話いただきました

私ね、普段から妄想癖があって「アレあったら良いなあ」って思いついたことを、計算もする前からやっちゃうことがあるんだけど。

ーーーすてきな妄想癖だと思います。

「あのときの講演で質問したオレです」って大人になった学生たちと再会するのが、今の私のちょっとした夢になってるの。

ーーー山口さん自身が、学生に良い影響を与えたことを感じられる瞬間ですよね。

そうそう。あとは「Lotusでの課外授業があったから保育士になりました」って、うちの保育園に履歴書が届いたりしてさ。「あれ、ひょっとして…?」「この名前と顔、どこかで…?」ってなったら良いなあって。

ーーーちょっと妄想の質が高すぎませんか。

好きだからね、ついつい。でもほら、口に出したら実現するじゃない?私はそう信じてるの。

ーーーでもお話を聞いていると、実際にありそうですよね。

そうでしょ?ちょっと今日計算しちゃおうかな。今の学生たちが卒業してから、だいたい何年後に会えるのか。

ーーーぜひ叶ったら教えてくださいね。

最後に取材班といっしょにパシャリ
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大村 昇
コピーライター・ライターとしても活動する宮城県美里町の地域おこし協力隊。クリエイティブギルド・まにまに