取材記事

【Cafe Darrent】愛犬と一緒に過ごせる場所を。自分の「好き」を大事にして開いたカフェ。

会津若松市は福島県立博物館から歩いて徒歩数分。

アンティークの玄関扉が迎えてくれるカフェ「Cafe Darrent(カフェ ダレント)」さんがそこにはありました。

扉を開けると、ナチュラル×ホワイトのおしゃれな印象のゆったりとした空間。カウンターの奥でメニューを仕込む店長さんと、フロアをトコトコと歩く、ワンちゃんの姿。

今回は愛犬と一緒にカフェを営んでいる植木 利江子(うえき りえこ)さんに、お店を作るに至った経緯をお伺いしてきました。

「ダレン」ちゃんと「すずらん」ちゃん

インタビュー中もとても大人しく植木さんに抱かれているすずちゃん。

───ワンちゃん、可愛いですね。お名前は?

「すずらん」です。女の子なので、すずちゃんって呼んでいます。

───犬種は何というのですか?

ミニチュアシュナウザーですね。

───壁にあった絵を見て、この子が「ダレン」ちゃんなのかと思いました。

ダレンは、前にいた子です。16歳手前まで生きたんですが、昨年(2022年)に亡くなってしまって。

ショックでしたが、しばらくした後、たまたまご縁があって、ダレンと同じくミニチュアシュナウザーで保護犬だったすずちゃんをお迎えしました。

この子はブリーダー崩壊でレスキューされた子で、来たばかりの頃はずっとケージの中にいました。

ですので、まだちょっと人が苦手なんですけど、今は少しずつ慣れてきて、ベッドで寝たり、店内を歩きまわったりしています。

───ワンちゃんが自由に店内を歩きまわれるのはいいですね。

ダレンも、シニアになってからでもそれぞれのテーブルをまわって「接客」を頑張っていました。

よく頑張ったから、ダレンが「初代店長」という感じです。だから、すずちゃんは二代目店長。

お店では一から手作りのスイーツとドリンクを仕込んでいるのですが、たまにどうしてもお客さんにメニューを提供するまでに時間がかかることがあるんですね。

そういうときに、店長が歩きまわって可愛がってもらう時間があると「うん、(接客)頑張ってて!!」ということがあったりするので、店長がいるとすごく助かることも多いです。

───席をまわるのが、もはや店長の大事なお仕事になっていたんですね。

ただ、まだまだ周知されていないので、たまにすずちゃんが「ダレン」って呼ばれているときもあります。

───もともとワンちゃんがお好きだったのですか?

小さい頃から、動物全般が好きです。ダレンは私が初めて飼ったワンコだったんですけど、そこからもうワンコ、とくにミニチュアシュナウザーなしでは生きていけないくらい大好きになりました。

同じくミニチュアシュナウザーを迎えた「シュナ友」さんとかは…。

───シュナ友…!

シュナ友さんはわざわざ横浜や東京などから、ここへ連れてきてくれたりしています。シュナ友のご縁ですね。

ダレンと一緒にいたいから「カフェ・ダレン“と”」

───このお店のお名前も、やはりダレンちゃんが由来なのでしょうか。

そうですね。ダレンとずっと一緒にいたいので「カフェ ダレン“と”」。「With」の意味です。「ダレン」の名前自体は「ダレン・シャン」という小説家の方からもらっています。だから、本人のつづりと合わせて「Cafe Darrent」となりました。

───このお店はどれくらいやられているんですか?

2023年4月で丸6年になります。店を開く前は異業種で、実はすぐそこのお城(鶴ヶ城/会津若松城)の案内の仕事をしていました。

それまで私は飲食業の経験が全くなかったので、お城で働きながら東京のカフェスクールに2年ほど通って勉強して。その後、喜多方のカフェで3年間、実務経験として働いて、調理師免許を取得しました。

地元の開業セミナーにも通いつつ「30歳になるまでに開業を」と目標を立てて開業し、今に至ります。

お話の間も、植木さんは度々すずちゃんを見つめていて、愛を感じます。

───それもこれも、やはりワンちゃんといるため、ということですね。

そうですね。一緒にいるためにはもう自営しかないな、というシンプルな考えです。

お店をつくったこと自体はうちの子と居るためなんですが、やっぱりまちのおしゃれなカフェを巡るのも好きだったので、

あくまで「ドッグカフェ」ではなく、みんなが来やすくて雰囲気あるお店づくりを目指しました。その中にワンコがいても大丈夫だよ、といった形で。

店内ワンコOKのお店って意外と会津に少なくて、もしあっても雨の日や冬は寒いテラス席が通例なので、私が一飼い主としても「屋内でそんな店があったらいいな」と思ったのもこの店をつくった理由ですね。

───おしゃれな雰囲気のなか、大好きなワンちゃんもいるという、お客さんにとっても植木さんにとっても嬉しい場所をつくりたかったんですね。

こだわりつくした癒しの空間

───さきほどおっしゃったとおり、入った瞬間からわかるほどのおしゃれな雰囲気の店づくりが感じられますが、インテリアのこだわりは何でしょう?

カフェをやりたいとなってから、自分のお店のインテリアをどういうふうにしたいかって考えたとき、東京にスクールのため通っていた間に200軒、300軒とカフェをまわってイメージを固めたんです。

───えー!!そんなに!!実地調査がすごい!!

当時はInstagramのようなSNSもないから、地図を見て歩いて調べて。そうしていると、だんだんとこういう雰囲気好きだな、とか、大体のイメージができてくるんですよね。

デザインにこだわるために、たとえば店内の壁の色も知り合いの左官の方に直接「ちょっと違う、違う」って試行錯誤しながら、絶妙なニュアンスの色も作ってもらいました。左官屋さんは「もう2度と作れない色だよ。」って言ってましたね。

あと、ドア。入口のドアは100年前のイギリスのアンティークで、塗り直しはしてないんです。直接、専門店で探してきて、一目惚れでした。酒屋さんだったこの建物の外観も、このドアありきでリノベーションしたり。とにかく内外合わせてシンプルなものにこだわっています。ただ今は少し「シュナウザーグッズ」が多くなってしまいましたけどね…。(笑)

たくさんのシュナウザーグッズ。かわいいです。

また料理を出す器は、益子の陶器市で手に入れた作家さんのお皿を使ったりもしています。

───本当に多方面からこだわったカフェなんですね。

大切なものがたくさんあるから、自分のペースで過ごす場所に。

───最後に、こうして「好き」にこだわりを持ってお店をやっていてよかったな、みたいな瞬間はなんでしょうか。

まずメニューにおいては、やはりケーキを作るのが好きで、たくさん作っていくうちに、私自身も把握しきれないほど開店当初よりバリエーションが増えて。

だから、日替わりや季節によって、毎日メニューも変えているんです。

本当にギリギリの当日でも変えたりして…。

───毎日…! アドリブ力がすごいんですね!

そうです!本当にアドリブです。 ケーキに使う果物も質にこだわっていて、その日になって仕入れるものに、良いものがなかった場合は出すのをやめます。だから「来週何ある?」って聞かれてもわからない。失敗することも多々あって、やり直したりすると、もう間に合わない!となって途中からメニューを加える、なんてときもあります。

それだけこだわって頑張ってつくったものをお客さんに提供して、最後に「美味しかった」って言われることは、もう本当に…嬉しくて…。やっててよかったなって思う瞬間です。

やっぱり自分のできる範囲でできることをやるっていうのが大事だと思っているので、今後もお店の営業の仕方なども工夫しながら、自分のペースを守ってお店をやっていきたいです。

あとがき

大切なダレンちゃんと過ごした場所、すずちゃんとこれからも過ごしていく場所、だからこそのこだわりの場所───。

自分の「好き」を大事にした、植木さんのさまざまな愛がいっぱい詰まったお店のお話でした。

すずちゃんに会いに行かれる際は、驚かせないように優しくしてあげて、ぜひワンちゃんと一緒に素敵な空間を楽しんでみてくださいね。

ABOUT ME
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Midzuki Fukuda
生まれも育ちも野口英世さんの町。 東京在住のとき、誇らしくその事を言ったら「ふーん」としか言われずにショックを受け、発信することにした。(冗談) 現在「召しませ、猪苗代。」発信中。 フリーランスデザイナー。「クリエイティブギルド・まにまに」所属。