取材記事

ずっと会津にいるからこそ、手掛けられるデザインがある。【デザインクリップ】

今回インタビューしたのは、おもに会津地域の企業のロゴマークや商品パッケージのデザインを手掛けるグラフィックデザイナー、斎藤志登美さん。

地元の会津若松を拠点に「デザインクリップ」という屋号で活動している“志登美さん”は、会津でどのような時間を過ごして今に至るのでしょうか。そして将来の展望とは。

普段お仕事をされているご自宅へお邪魔して、お話を伺ってきました。

短大を経て、地元のデザイン事務所へ。

お洒落な装いの志登美さんです

ーーーもともとデザインはお好きだったんですか。

はい、好きでしたね。小学校の卒業文集に「なりたい職業」の欄があって、そこにデザイナーと書いていました。周りの友達はキャラクターがデザインされたキラキラしたバッグや筆記用具を使っていましたが、私は当時からシンプルなものが好きでした。無地とか普通のチェック柄とか。ほら、デザインってすっきり洗練させていくことで成立させるじゃないですか。ロゴマークなんて特にそう。だから当時から、デザイン的な思考で物事を見ていたのかもしれません。

ーーー本格的にデザインを学び出したのはいつからですか。

郡山市の短大に通い始めた頃です。実家との距離も考えて、そこに行きました。でも短大なんて2年しかありませんから、具体的には新卒入社した会社で勤めながら覚えたような感じですね。就職したのは会津若松のデザイン事務所です。当時は地元でデザインの仕事をできるとは思っていませんでしたが、ちょうど会津で事務所が立ち上がるタイミングでアシスタントを募集しており、ご縁あって入社できました。

ーーーその会社ではどんな業務が多かったんですか。

人数も少なかったため、まあいろんなことをやりましたね。看板、パンフレット、ポスター、新聞広告…。撮影から取材から、いろいろ経験させてもらえました。ローカルということもあって、たとえばコピーライターを分業できず全部自分でやらなきゃいけないという大変さもありましたが、それが私にとっては面白くて。さまざまな実践を通して、修行させてもらった感じですね。

ーーーその後に独立されて今に至るんですね。

そうです。会社には11年ぐらい勤めて、それからフリーになりました。気づけばずっと若松で活動していますね。

ーーーデザイナーさんということで、てっきり都会で勤めてから戻ってきたのかと思っていました。会津を出て行きたいと思ったことはありませんでしたか。

ありましたよ。 私の周りにも、大学や専門学校への進学で東京に行く人も当然いましたからね。でも、今ももちろんですが当時の私には大切にしたい人がいましたし、地元への思いもあったのでこちらに留まりました。

ーーーとてもすてきなご決断ですね。

人との繋がりが、仕事を生む。

自宅の塀に備えられたデザインクリップの文字

でも結果的に、若松を出ていかなくて良かったのかなと思っています。

ーーーそれはなぜですか。

今は地域の人との繋がりがベースとなって、仕事を頂けているからです。もし都会に行っていたら、今みたいに若松のデザインの仕事をできていたのかなと思いますし、たとえUターンしてきたとしても、しっかり人との繋がりはあったのかなって。ずっとここにいるからこそ、多くの人と繋がって仕事をさせてもらっている感覚はあります。田舎は特に、人との繋がりで仕事が生まれますから。

ーーーたしかにそのイメージは強くありますよね。現在は、どのような仕事に取り組んでいますか。

おもに地元の事業者さんとの仕事が多く、会社のロゴマークやパッケージデザインを制作しています。ときに複数のデザイナーが競うコンペに臨むこともありますね。

ーーーそうなんですね。志登美さんのデザインの特徴は何でしょうか。

むかし書道を習っていたこともあって、筆で文字を書くのが得意というか、他にはないインパクトを生んでくれていると思っています。やっぱり仕事をする上では、パッと見たときに目立つことや他のデザインとの差別化を意識していますからね。

そして、その筆文字が“会津っぽい”雰囲気も醸し出して、地域に合っているのかなとも思います。ただ、あんまりやりすぎるとカッコ悪くなってしまうので、“イマっぽい”洒落たスタイリッシュな雰囲気とのバランスも考えながら制作しています。

ーーーちなみに「デザインクリップ」という屋号には、どんな意味が込められているのでしょう。

なんでもクリップしてまとめて整理したいっていう気持ちがあって、そして語感が良いからですかね。デザインの力で情報をまとめて発信したいという思いもあります。でも最近はみんな「志登美さん」って呼ぶので「シトミデザイン」にすれば良かったなあとか、やっぱり今から変えるのも違うよなあとか、すごく悩んでいます。

ーーーでもそれは何よりですね。屋号というよりも、人として認めてくれているということでしょうから。

志登美さんが手掛けてきたデザインの一部

これからより一層、力を入れていきたいこと。

オリジナルの会津小法師コーンが敷地内にぽつり

ーーー今後も会津を拠点に活動される予定ですか。

そうですね。これまで通りデザイン業を続けつつ、あとは自分のオリジナルのグッズ制作にも、もっともっと取り組みたいと思っています。

ーーー志登美さんオリジナルのグッズですか。

はい。最近ちょっとずつ目立つようになってきたのが、会津小法師コーン。工事現場にあるような赤い三角コーンにデザイン性をプラスしてみたら、福島県のデザインコンペティションで賞を頂いたこともありました。建設会社に頼んで、徐々に数を増やしています。ミニチュアのストラップやフィギュアもありますよ。

ーーーとても可愛らしくて素敵ですね。

ちょっとした工夫で、日常の見え方って変わりますよね。他にもマスキングテープやご朱印帳、プチ缶など、自分の会津っぽいデザイン性とも掛け合わせたグッズを考案して作っています。会津地域のお土産もまだまだ開発の余地があると思っていますし、自分ができる範囲で少しでも増やしていけたらと思っています。

ーーー今後のご活躍にも注目しております。ありがとうございました。

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大村 昇
コピーライター・ライターとしても活動する宮城県美里町の地域おこし協力隊。クリエイティブギルド・まにまに