取材記事

【アクアヴィテ】レトロな七日町で「生命の水」と出会う。150種類を取り揃える会津初のウィスキー専門店

生命の水

突然だが、あなたはウィスキーをどれくらい飲むだろうか?
「会津なのに、ウィスキーの話題?」と思われる方もいるかもしれない。

たしかに日本酒のイメージが強い会津だが、七日町には会津初となるウィスキー専門店「アクアヴィテ」がある。「アクアヴィテ」はラテン語で「生命の水」という意味であり、ウィスキーの語源になったとも言われている。

最近ウィスキーに興味を持ち出した私はツイッターでこの店の存在を知り、気がつけば何度か足を運んでいた。

アクアヴィテTwitterプロフィール
[画像] アクアヴィテのTwitterアカウント。最新情報はこちらでチェックするのがオススメだ。

店内には世界中のウィスキーが所狭しと並んでおり、目移りしてしまう。誰しもがどこかで名前を聞いたことがあるような銘柄から珍しい高級ウィスキーまで様々だ。まるで世界中を旅しているような気分にさえなる。

アクアヴィテ 商品棚

この記事をお読みのあなたにも共感頂けると嬉しいのだが、私のような初心者はこうした物をついラベルのデザインだけで選んでしまいそうになる。その上、ウィスキーに対してどこかとっつきにくい印象を抱いていて、専門店に足を運ぶのも気が引けてしまう。知識がないと踏み込んではいけないのでは、と勝手に思い込んでいるのである。その結果、いつまで経っても「興味はあるのに一歩を踏み出せない」状態に陥る。

そんな私のような初心者・小心者が相手でも優しくアドバイスしてくれるのは店主の大竹翔太さん(27)だ。味の好みや予算を伝えると整然と棚に並べられたボトルの中から2,3本の候補を挙げてくれる。もちろん全ての銘柄というわけではないが、ボトルによっては試飲(有料)する事もできる。酒の品揃えもさることながら、この「話しやすさ」「接しやすさ」こそが「アクアヴィテ」の魅力なのではないかと私は感じている。

つまみの品揃えも豊富だ。スーパーでは見かけないような高級なチーズやナッツ類、ときには生ハムを置いていることもある。品揃えが変わるのも個人商店ならではの楽しみだ。

今回は大竹さんに会津の地でウィスキー専門店を始めるに至った経緯を伺った。


最初からウィスキー好きというわけではなかった

―――昔から、お酒の中でもウィスキーが好きだったのですか?

大竹さん:

実は、あまりこだわりは無かったんです。

ワインやブランデーにも興味がありましたし、自分でカクテルを作るようになってからはジンやウォッカなども飲んでいましたね。まんべんなく飲んでいた、そんな感じです。カクテルグッズはバーで働いていた知り合いの方から譲っていただきました。

ウィスキーに興味を持ったのは、たまたま兄貴が飲んでいたシングルモルトウィスキーを貰ってからだと思います。「美味しい」というよりも「こんなのあるんだ」というのが第一印象でしたね。家族はみんなお酒が好きですが、その中でも兄貴の影響が大きかったと思います。

―――いまのところ「趣味でウィスキーを楽しむ個人」といった印象ですが、そこからどの様にしてこれほど多くのウィスキーを集めるようになったのでしょうか?

大竹さん:

最初は毎月一種類ずつ買い増す程度だったのですが、そのペースが早くなったのは某酒類販売チェーンに入社してからです。

あるとき、お客様から受けたウィスキーに関する質問に全然答えられず、恥ずかしい思いをしたんです。その場自体は特に問題にはならなかったのですが、どうにもそのことが悔しくって。カタログを隅から隅まで読んで色んな種類のウィスキーを覚えました。それでは飽き足らずちゃんとした専門書も読むようにり、ウィスキーの種類のみならず歴史なども学ぶようになりました。お酒に関する資格・検定には前々から興味があったのですが、ウィスキー検定の存在を知り、取得したのもその頃です。

―――検定試験の勉強を進めるにつれて、ウィスキーに対する興味も深まっていったのでしょうか?

大竹さん:

3級、2級・・・と級が上がるにつれて、当然ながら求められる知識は広く浅いものから狭く深いものになっていきますよね。そうするとテキストや過去問に加えて、専門書を読むようになります。専門書には色んな銘柄のテイスティングノートが書かれている訳ですが、そうしたものを読んでいると「テイスティングノートにはこう書いてあるけれど、実際どんな味がするんだろう?どんな香りがするんだろう?」と飲みたくなりますよね。自然と興味が深まっていったと思います。

「マッカラン 12年」と「ラフロイグ 10年」

酒類販売チェーンからの独立

―――なるほど。その頃はまだ某酒類販売チェーンにいらしたのですよね。なぜ、独立しようと?

大竹さん:

色々と要因はありますが、趣味が高じてというところが大きいですね。チェーンでの接客や売場づくりは楽しかったですし、自分が知らなかったお酒との出会いもある良い環境でした。

一方で、色んな種類のお酒を扱っている会社であることもあり、求められる知識は基本的に「広く・深すぎず」なのです。ワイン、焼酎、日本酒、テキーラ、ブランデーなどに関する知識をまんべんなく求めらるのです。お酒全般が好きな私にとっては悪いことではなかったのですが・・・いつしかウィスキーにどっぷりハマり、他のお酒よりもウィスキーに割く時間を求めるようになった結果、独立することを思い立ちました。独立するなら会津じゃなくても良いのではと思われるかもしれませんが、地元を盛り上げたいという気持ちもあり、知り合いもいる会津で始める事にしました。

―――大手チェーンから独立をするのはかなりの覚悟が必要だったのではないでしょうか?

大竹さん:

もちろん覚悟は必要ですが、自分のやりたいことを実現するにはそうするしかなかったんです。でも、お酒の売り方は身についていますし、会津の人がどの時期にどの程度お酒を買うかも分かっていたので、そうした点はあまり不安はありませんでした。資金のことだけが唯一の不安でしたね。

開業にあたってはかれこれ一年くらい準備しました。チェーンで働く一方で、独立した知人のアドバイスを聞いては事業計画書を煮詰める日々を半年ほど過ごしたのですが、相談できる人がいた事はとても救いになりました。相談相手がいないと、独立したくても何をして良いのか分かりませんからね。

まず商工会議所に駆け寄ったのですが、当初は2〜3年掛けて資金を貯めようという話になっていました。ところが、あるとき某銀行さんの創業支援セミナーに参加したことがきっかけで「今しかない」となり、そこから急ピッチで準備を進めました。

開業するなら今しかない

―――なぜ「今しかない」と?

大竹さん:

色々と理由はありますが、会津「初」にこだわりたかったんです。「初」というのはインパクトがあるのは言わずもがなですが、後発だと「どうせ真似したんだろう」と思う人が少なからずいるわけで、それを避けたかったんです。それに、大半のお客様は最初にオープンしたお店に行きますしね。

その後、資金調達の手続きや酒類販売の免許申請などを進めて、2019年10月に正式オープンしました。

―――大竹さんの思い切りの良さはなんだか気持ちがいいですね。


お客様応対のためにインタビューはここで中断となったが、お客様との会話の内容も興味深かった。中でも酒類販売店における「試飲」や「通信販売」に関する話は業界の裏話を聞いているようで、少し得した気分になる。こうした話はチェーン店では恐らくなかなか耳にすることが出来ないだろう。

「マッカラン 12年」と「ラフロイグ 10年」

この日、私は「マッカラン 12年」と「ラフロイグ 10年」を購入してお店を去った。まだまだ私のウィスキーの旅路は始まったばかりだが、若く頼りになる旅先案内人の大竹さんが居ればこれからも素敵な出会いが待っていることであろう。

ぜひ、この記事をお読みのあなたも「アクアヴィテ」で広大なウィスキーの世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。もちろん、コアなウィスキー・ファンにもお勧めできるお店である。

店名ウィスキーショップ アクアヴィテ
営業時間[平日] 14:00 〜 22:00
[土日祝日] 11:00 〜 20:00
[定休日] 水曜日
住所〒965-0042 福島県会津若松市大町1丁目1-41🔗
TEL080-9336-1964
Twitteraquavite_aizu🔗
Instagramaqua_vite🔗
Facebookウィスキーショップ アクアヴィテ🔗
ABOUT ME
藤沼淳一
1988年米国出身、東京育ち、会津大学卒業。東京にて7年ほど過ごした後、2018年に会津若松へ移住。本業はITコンサルティングおよびシステム開発。趣味はコーヒー豆の自家焙煎やボードゲーム、映像制作など。