取材記事

「差別化ではなく独自性」カメラ×野鳥で地域の共育ちを目指す【オオタケカメラ3代目・大竹伸知さん】

スマホで写真がいい写真が撮れてしまうこの時代、そんな中会津にある一つの写真屋さんがある。その写真屋さんでは固定概念にとらわれない考え方を持つ店主と、全く新しい写真屋さんのあり方を体現しているお店があった。今回はそこの店主、大竹伸知さんからお話を聞かせていただいた。

会津をもっと発信していきたい

---まずは今回この取材を受けていただけた経緯を教えていただけますか。

理由としては、あいづっぺでぃあに携わっている古川さんとの繋がりで話をもらったことが理由でした。単純に人の繋がりですね笑
その話と、僕の会津をもっと発信していきたいという思いが合致したので今回取材を受けることにしました。
会津はいいものがたくさんあるのに、発信力が弱いんです。けど、誰でも出来ることではないですし、年齢層も高いのでどう発信していいのかわからない人もいます。だからこそ発信できる人が代わりに発信していくことが必要なんです。

---なるほどですね、発信という部分では私たちもぜひお力になりたいと思っています。

「現像がうまい」という周りの後押しで、駄菓子屋から写真屋に

---次に、このお店の成り立ちを教えていただけますか?

現在私は3代目で、実は初め「駄菓子屋」を営んでいたんです。それが1963年でした。まだ戦争があった時、初代は満州にいっていました。そのあと炭鉱で働いているときに父が生まれ、その後会津に帰ってきて駄菓子屋を始めたんです。

---???、駄菓子屋ですか?それがどうして写真屋さんに?

初代が現像がうまかったんです。炭鉱で働いていた時代に現像のコンテストでたくさん賞をとっていたくらいでした。「大竹を写真屋にしたのは自分たちかもしれない」と言っていた人がいるくらいの周りからの後押しがあって、写真屋になりました。昔の現像なんて、ある程度のスペースがあればできたので。「なった」と言うより「なっちゃった」ですね笑

この本の中にも、初代の大竹さんが周りからの後押しで写真屋になったことが記されている。

---そう言った経緯があるんですね。最近だとスマホで簡単に綺麗な写真が撮れるようになって、写真屋さんもだいぶ減ってきてしまっているように思うのですが。そう言ったところはどうお考えですか?

そうですね。昔は周りに5件くらいあったけど、今ではうちだけになっちゃいました。
確かに現像の需要はほぼ無いですが。実は七五三とかの需要はそんなに昔と変わらないんです。売り方が変わっただけなんです。

機材や技術ではなく在り方。常識を外すタイミングがカギになる。

---売り方が変わった。どう言う風に変わったんでしょうか。

七五三の例だと、昔は1枚とっていくらと言った売り方だったんですけど、今は複数枚とってその中からお母さんに選んでもらうと言った売り方なんです。
昔の売り方で売っているのが個人店が売れない理由なんです。写真の質ももちろん大事ですが、それより今はかわいい写真が撮れるか、つまり子供をなだめることができてお母さんを満足させられる、ある意味女性らしさがある写真屋さんの方が求められているんです。
その時代の変化についてこれなかったのが個人店、その変化に対応したのが大手の写真屋なんです。やっぱり個人の写真屋さんは年齢層も高いし、なんせ職人気質な人が多いので子供をあやせるスタッフなんてほとんどいないですから笑
そんな時代に女性ではなく男性に訴えかけてきてしまったのが個人店がうまくいかなかった問題ですね。2〜3年時代に乗り遅れただけでこんなに差が生まれてしまいました。昔こうだったからこうと言う「常識」を外すタイミングが大きなカギでしたね。大手が撤退していないから決して勝算がないわけじゃないんです。

鳥が好きだった。写真屋×野鳥と言う独自性

---そう言ったところで、オオタケカメラさんの強みは何でしょうか。

うちの強みは「鳥」です。野鳥ガイドですね。本来そう言うのはペンションを持っている人がやっているのが多いんです、なので結構珍しいと思います。

---僕もそう思いました。先日古川さんから野鳥を撮っている写真屋さんと聞いて何で写真屋さんなのに野鳥なの?って思いました。

ですよね、これも人からの一言がきっかけでした。と言うのも2006年くらいからインターネットが当たり前になってきて、地域経済がガチャガチャになってしまったんです。それで誰でも扱える商品を売ってもダメになってしまいました。どうしていこうかと考えていた時にある人に「お前にしかできないものは何だ」と言われたんです。それで考えたら僕には「カメラ」と、もともと好きだった「鳥」しかなかった。それで自分しかできない、写真屋の野鳥ガイドを始めて、今では全国から鳥を撮りたい人たちに来て頂いています。

---全国からお客さんが来ているんですね。野鳥を撮りたいと思った人がオオタケカメラさんを選ぶ理由はどう言ったところにあるとお考えですか?

おそらく野鳥が綺麗に取れる情報を大っぴらに公開してやっている僕みたいな人がなかなかいないからかもしれません。公開してしまうとその場所に人が来て鳥が逃げてしまいますから。例えばヤマセミと言う鳥を綺麗に撮りたいと思っても日本全国でもうちほど綺麗に取れる情報はないんです。と言うより情報を公開している人がいないんです。

---発信した方がいいように思うのですが。どうして発信する人が少ないんですか?

それは野鳥を撮るための準備が関係してると思います。野鳥を撮るためには地理や高度、湿度などいろんなことが影響していて、野鳥を綺麗に取れるところを見つけるまで数年かかることもあります。しかし、場所を見つけて終わりじゃないんです。そこから人間に慣れてもらうために何度も何度もその場所に行ってようやく撮れるんです。そうやってやっと撮れる場所を他の人が行って鳥に気づかれたら、鳥は警戒心が強いのでその場所に鳥がしばらく来なくなってしまうんです。長い時間をかけて下見をして、その小さな積み重ねをしてきてやっと一枚撮れるものなので、場所を見つけると言うより場所を育てていくと言った感じですね。やっと育てた場所がなくなってしまったら嫌でしょ?だから公開しないんだと思います。

---なるほど、そう言った情報が少ないなか、大竹さんのところに来れば素敵な野鳥の写真が撮れるんですね。

ほぼほぼ撮れます。もう断言してます。そのために下見の時点で地形を考えながら、野鳥がいる場所を見つけたら、どれくらい近づけるのか、撮りたいお客さんが来るのに安全かなど色々考慮しながら下見をしています。それを自分ですると結構な時間が必要なので、なら僕の所に来た方が撮れるし、早いのかなと思います。できることは発信していかないと、何も始まらないので。

---なるほどですね、鳥が好きだったことと、カメラの技術があって今では全国からお客さんが来るほど人気になったんですね。

そうですね、やっぱり人と同じ商品だとここまでにはならなかったと思います。でも他の人がやっているから僕はこれをやろうという「差別化」はしてはいけない。差別化をするというか独自化ですね。

---差別化より独自化?どういう違いですか?

例えば他の人はこうやっているから俺は違うことしようとして、考えと違うことを始めてしまっても、やっぱり途中で自分じゃなくなってくる所があると思うんです。そうなってくるとやってることが億劫になったりしてしまう。それよりかは今あるものに対して、「俺ならこういう答えを出す」というのが独自化になると思います。それが僕には写真屋と野鳥だったし、そういう答えが出てくれば勝算はあると思います。それが決まったらあとはわかってくれる人にどうアピールしていくか、俺これできるよって言えるかですね。それがSNSなどでの発信だと思います。

鳥好きが集まる、写真屋さんが作る会津の新たな経済圏

---なるほど、そういった考え方や精力的な発信によって、今のように全国からお客さんが来るサービスになったんですね。

そうですね、ありがたいことで。それに県外からのお客さんが来てくれるおかげで会津を知ってもらえて、地域活性化にもつながりますからね。

---なるほど、野鳥で地域活性化できるのはまた新しいですね。それは最初から考えていた試みだったんですか?

いえいえ、そう言う訳ではありませんでした。
野鳥を撮るのは、早朝からの撮影になるので前泊して頂いたり、連日のご予約を頂いたりすることが多いです。そうすると、宿泊先を見つけなきゃいけないし、その間の食事もあるので会津の飲食店を利用するし、せっかく来たし観光していこうかとなれば観光地も何件かいくと思います。そうすればそれなりに会津地域にある程度のお金は落ちると思うんです。なので県外のお客様が増えれば増えるほど僕以外の会津で仕事をしている人みんなが笑顔になれますよね。

---確かに、野鳥がきっかけで会津に来てくれる人がこれからも増えていけば会津を知ってもらえるし、会津の経済ももっと活性化していきますね。

そうです。やっぱり会津みたいな地方は共育ちという考え方で、みんなで成長していくというのが大事で、できないことはできる人がやって行かないといけないんです。でも会津には県外の人が来たとしてもその受け皿がない、その受け皿を増やして整えていくことが今の会津の課題ですかね。

当たり前の壁を壊してくれる人が必要。地方でのスローライフ

---ここまでお店の生い立ちから、大竹さん自身の考え方まで様々なお話を聞かせていただきました。最後に若者に向けて何かメッセージをいただけますか。

こっちに来た初めは給料が下がるかもしれないですけど、スローライフを送りながらストレスなく自由に生きる意味では会津はとてもオススメです。
先ほども言ったように共育ちという考え方が根づいているので人に興味を持ってくれます。企業でもノルマや数字もありますが、どちらかというと人が大事にされるので人情を人情で返すことができればとても住みやすいです。若い人の意見も社長に直に相談できたり、取り入れてくれる企業も多いですし。

---人同士の繋がりが大事なのは、地方の温かさのようなところが感じられますね。正直都内の人たちのイメージだと、地方は不便だという意見があるのですが・・・

そんなことはないですよ、こっちでは車移動が主になるし、停めるところもいっぱいありますしね、それに都内でも2~30分歩いたりするでしょ?こっちでもそれくらい歩かなくてもコンビニだってありますし、逆にチェーン店じゃない面白いお店がたくさんあって楽しいですよ。
確かに都内での当たり前はこっちでは通用しないかもしれません、でもそれが逆にこっちでのビジネスチャンスにつながったりするので何かを始めたいと思っている人とかはこっちでやってみるのもいいかもしれません。そうやって会津に若者ならではの視点で新しい風を吹かせてくれる人、僕らの当たり前や概念を壊してくれる人が会津に来てくれたら嬉しいですね。

人の温かさを感じられる会津、その中で大竹さんのような独自の考えで会津を盛り上げていこうと考えている人もたくさんいる。
都内の息苦しさやストレスを感じている人はぜひ、会津のような義理と人情溢れるところで新しいことを初めてみたり、自由なライフスタイルを目指してみてはいかがだろうか。

オオタケカメラ

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