取材記事

【LAKE SIDE HOTEL みなとや】猪苗代の湖畔に佇むお宿から観光客への多角的なアプローチ

今回私がインタビューさせて頂いた方は猪苗代湖の長浜の目の前に位置するLAKE SIDE HOTEL みなとやの営業部長 渡部一登(わたなべ かずと)さんです。

1877年から続く老舗ホテルを継ぐ渡部さん。東日本大震災、コロナパンデミックによる時代の変化に合わせ、様々な角度から新たな事業を展開しています。今回は、その経緯についてお聞きしてきました。

上京後から現在までの道のり

   生い立ちをお聞きしてもよろしいでしょうか?

はい、生まれは猪苗代で高校から郡山に通っていました。そして、大学から東京に行って、そのまま社会人になって仕事をして震災の前年、2010年に戻ってきました。

   上京されていた時はサービス業をなさっていたのですか?

大学のアルバイトではホテルのベルボーイをやっていました。その後、社会人になってからは旅行会社に勤めていました。

   どちらも観光業のサービスという感じですね。それはやはりご実家の影響ですか?

そうですね、旅行も好きだったというのもありますし、色んなところを仕事しながらまわれるのも魅力的でした。好きの延長線って感じですね。

   猪苗代に戻ってきて、すぐに東日本大震災が発生しましたが、その時はどのような状況でしたか?

震度6弱とかだったかな。49号線は避難する方の車がたくさんいて、当日は10人ほどの受け入れをしていました。そこからどんどん増えていって100人は超えていました。その時は大広間などを使っていただくようなこともありました。ラジオを通して受け入れの情報発信などもしていましたね。

猪苗代町では、複数の体育館などあるのですが2000人くらい避難していまして、そこから宿に割り振られたかたちになります。浪江町の方々が避難なさってましたね。

コロナ禍の逆境を乗り越えるアプローチ

   コロナ禍になってどうでしたでしょうか?

最初のゴールデンウィーク(2020年)も自粛しました。コロナの前に屋上で飲食店を始めていたのですが、それも屋上でグランピングできる施設にしました。

   屋上ですか!野外ということはコロナも段々落ち着いてからは利用者の方も増えましたか?

はい、増えましたね。

   コロナ前と比べると利用者の方はどのくらい戻ってきているでしょうか?

コロナ前(2019年)と比べると売上構成も変わってきていて、震災の時もそうなんですが、ピンチの時に何かやるようにしています。

例えば震災の前だと、団体合宿の受け入れなどはやっていなかったんですが、震災後にやるようにしたり、あとは葬祭の際のお食事の提供などもおこなうようになりました。どちらも順調だったんです。

それが、コロナになってからは、それらの団体合宿等の受け入れや葬祭なども全部なくなってしまいました。

   なるほど、大人数で何かやるのがダメでしたからね。団体の利用者は望めなくなってしまったということですね。

そうですね。以前の柱(団体受入、葬祭関連)は2つとも崩壊してしまって、新たな柱に何を作ろうか考えていたんです。コロナで団体の受入は望めないので、今度は個人に着目するようにしました。そして、”体験”をしてもらい、いかに滞在時間を長くしてもらえるかを考えるようになりました。

   つまり、アクティビティや食事や宿泊を全てみなとやさんが提供できるようにしたということですか?

はい、そうです。

   全てが含まれているプランなどもあるのでしょうか?

はい、ありますね。夜ご飯は中華を食べて、サウナもグランピングもできるようなプランもありますし、夜グランピングだけの一泊二食付きのプランなんかもありますね。とりあえず、色々と抱き合わせてやっています。

   サウナ!とても気になっていたのですが、猪苗代の湖畔の砂浜にサウナテントがありますが、あれはいつからやっているのでしょうか?

コロナが始まってからですね。2020年の夏からです。

   暑くなったら、目の前の湖にそのままダイブできるのですか?

そうですね。先ほども飛び込んでいましたよ。

   すごいですね。寒そうです。(取材日2022/12/29)

   サウナブームですから、サウナのみの利用者の方も多いのですか?

はい、サウナ利用者の方は日帰りの方が多いです。ですが少しずつ、宿泊される方も増えてきている印象です。サウナに関しては早めに取り組めたのがポイントだったかなと思います。マーケティングとか、どこに宣伝すれば良いのかはわからず、絶好のロケーションが目の前に広がっていたので、ただやってみたって感じですね。

   ここは49号線沿いのすぐそばなので、すぐ目に入りますね!立地がプロモーションになっていそうですね。

そうですね、こういうロケーションはあまりないということで、メディアの方に取り上げて頂いたりしてますね。非日常的な経験ができるので、喜ばれますね。

   すると、今は個人や体験へのシフトをしてサウナやグランピングをしているということですが、少しずつ回復傾向にあるということでしょうか?

はい、あとは飲食と宿泊がもう少し伸びるといいなと思っています。やはり、コロナ禍でそこが凹んでしまった分、サウナやグランピングで補っている形になっています。コロナ前の90%くらいまで戻ってきていますね。来年が勝負の年になりそうです。

猪苗代の魅力や今後への期待について

   渡部さんにとっての猪苗代の魅力とはなんでしょうか?

自然ですね。磐梯山があって目の前に猪苗代湖がある。このロケーションというのは何にも代え難いと思いますね。

   では、今後の猪苗代町への期待や可能性についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

みんなが新しいことをやって行こうよ!という感覚があるといいなと思います。猪苗代町は国立公園が多いので結構規制があるんです。なので、ある程度規制緩和も必要だと思います。ショッピングモールが来るっていうのも何か違う気がしますし、猪苗代と言ったら山と湖なので。ここに行ったら、次はあそこに行きたいなと思わせるような所を作れればいいかなと思っています。

猪苗代は通過点と言われてしまう事がよくあるので、できるだけ猪苗代での滞在時間を増やしていただけるようにしていきたいです。

猪苗代にとってマイナスな所を伸ばしていくというよりかは、得意な所を伸ばしていきたいですね。マイナスな所をいくら補填しても他には中々かなわないので。

   なるほど、都会を真似たものではなく、このロケーションであるからこその魅力的なものができれば良いなという事ですね。

楽しめたりとか、ここに来たらこれをしなきゃいけないよねとか、写真撮らなきゃいけないよねと思えるようなものが色々なところにあれば、滞在時間も増えると思うので。

   ありがとうございます。特に会津の外から来てくださる方や興味を持たれている方に一言いただけますでしょうか。

「自然と共に。」ですかね。昨日のように大吹雪だと全く何もできなくなるので、それを良しとしてもらえることが大切なんですよね。雪はめっちゃ降るんですけれど、その後の景色はとても綺麗ですし、もちろん夏場もとても綺麗です。自然と共に楽しんでいただきたいなと思っています。

みなとやさんの今後の展開について

   今後の展開などはありますでしょうか?

来年、ベーカリー事業を行う予定です。米粉を使って米の消費を上げていきましょうというコンセプトで事業を進めていく予定です。このみなとやの店舗の中でパン工場を作る予定でして、できればGWの前ぐらいにはスタートできればなと思っています。パンを始めます。

   すごいですね!喫茶のような形ですか?

そうですね、以前からやっている中華もそのまま食べられます。このまま色々なビジネスの柱をまた作りながらやっていく予定です。またいつ柱が折れてしまうかわからないので。頑張りたいですね。

   楽しみです!ありがとうございました!

必見。みなとやさんに行ったら是非見ていただきたいアートについて

   最後にウォールアートプロジェクトについてお聞きしてもよろしいでしょうか?

はい、2018年に私は青年会議所の理事長をやっていまして、その年、青年会議所が40周年を迎えまして、節目の年だったんですね。そこで何か記念事業をしようということになり、ウォールアートプロジェクトをやることになりました。その事業は各小学校、廃校が決まっている学校が結構多かったんですね。それでそこに、廃校の利活用でしたり、子供たちに本物の絵を通して、本物に触れ合ってもらいたいという思いから、各学校にアートを施しました。

その時に書いて頂いたアーティストの方に、うちの絵も描いていただいたんです。

あとがき

階段に施されたアートはまるで美術館のようでした。猪苗代に生存する生物たちが描かれており、色鮮やかな表情を魅せてくれました。是非、ご利用の際には立止まってご覧になってください。

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asaichiro.kazawa
会津若松市でゲストハウスを営んでいます。 日本酒、馬刺し、ラーメン、アウトドアが大好きです。