取材記事

一つ一つ実現することで引き寄せる理想の未来【磐梯町地域おこし協力隊 斎藤拓哉さん】

会津若松市でゲストハウス運営や空き家対策などの活動を行っており、現在は、磐梯町の地域おこし協力隊としても活動されている斎藤拓哉さんにお話を伺いました。

福島県中通り地方の二本松市(旧安達町)出身の斎藤さんは、会津大学進学を期に2010年に会津若松市に移住。大学院に進学しARを使った仮想現実の研究をされていましたが、ゲストハウスをやりたいという思いが強くなります。

会津若松市で「空き家で飲み会をしよう」というイベントを主催したことをきっかけに2017年「空き家てらす」の活動を開始、2018年6月には会津若松市馬場町で「隠れ家ゲストハウス」を開業します。

さらに2020年12月には念願の大きな物件でのゲストハウスの話が進むはずが、コロナ禍の影響もあり直前でストップがかかります。

そのような状況の中、空き家活用や、空き家からつながる移住定住といった仕事をもう少し勉強したいと思った斎藤さんは、タイミング良く、磐梯町で空き家対策の地域おこし協力隊を募集していることを知ります。

今回は、磐梯町役場から少し離れたところにある、磐梯町の「空き家相談窓口」でお話を伺いました。

窓の外には磐梯山が見えます

ワクワクするような空き家対策

ーーー磐梯町での今の活動を教えてください

空き家対策で2021年4月に地域おこし協力隊に着任しました。業務としては空き家バンクの運営推進、空き家情報の調査など、空き家活用に関わるもの全般です。

着任後は、古民家を利用した「空き家相談窓口」を開設しました。

磐梯町にはおしゃれなお店が少ないんです。つまり空き家の活用で参考になる物件がないんです。それがすごく課題でした。

会津若松市だと、古民家カフェのようなリノベーションをしたおしゃれなお店がいくらでもあるので、「うちの物件がこうなるんだな」とか、「この前ホームページで見た安い物件が、もしかしたらこう使えるんじゃないか」と想像する余地があるんです。

磐梯町の場合は、空き家を売るか、取り壊して新築にするかで、リノベーションという意識がないのを話を伺っていてすごく感じました。

それで参考というか、事例になる場所を作ろうということで、ここを磐梯町役場で借りました。個人で所有されているところを役場で賃貸で借りています。

古民家をリノベーションして「空き家相談窓口」を開設

もともとは自転車屋さんだったという日当たりのいい空き家相談窓口

ーーー今、2023年1月ですが、2021年4月に地域おこし協力隊になって、丸2年も経たないのに「ここを借りませんか」と役場に提案したのですか?

そうです。めちゃくちゃ頑張りました。

2021年5月に物件を見つけて、実際に賃貸契約を結んだのが2021年12月です。個人宅を賃借しリノベーションする前例がなく、何度も会議を開いて説得しました。

空き家対策は今すぐ生活が改善するような政策はないですし、来月やっても来年やってもそこまで変わらないんです。

でもそれをずるずる放っておくと、取り返しがつかないところまで行ってしまう。

いかに拠点を作る価値があるのか、相談窓口を作る価値があるのか、啓蒙活動する身近な場所に価値があるのかを説き続けました。

1日だけの空き家利用で実績作り

提案の段階で、まずはここを1日借りて、中学生の職場体験の場所にしました。空き家対策の仕事の体験会のようなものを行いました。その時は空き家対策について楽しみながら知ってもらうためにワークショップ形式で「みなさんに方眼用紙を配るから、この建物の間取り図を作りましょう。」と。

「空き家を見てください」という時って、間取り図がない場合が多いので、お話を聞きながら、方眼用紙で手書きで間取り図を作る作業を絶対にするんです。

それをやったら中学生が大盛り上がりで、学校の先生も、「これを授業で使いたいぐらいだ」って。

2021年10月は、磐梯町駅から、ここがある大寺通りにかけてハロウィンのイベントをやっていて、スタンプラリーがあったので、その設置場所に使いました。

そのときは会津磐梯宝の山ファンライドというスポーツ自転車の体験会や、磐梯町の町民によるスニーカークリーニング、古本や古道具も展示も行いました。

こういうきっかけ、活動があったおかげで無事、物件を借りられました。

自分の中で、活動のテーマとしては、スモールスタートというのが大事だと思っています。

気軽に立ち寄れる「空き家相談窓口」

2022年3月に開所してからは、毎週火曜日と木曜日は、「空き家相談窓口」として、朝の8時30分から16時30分までずっとここにいて相談を受けています。予約なしでご利用いただけます。

ーーー空き家相談に来るのは地元の方ですか?

町民の方々に来ていただくのが一番の目的ではあるので、「なにやってるの?」と、ふらっと寄ってくださる方もいますし、あとはホームページを見て、「実家が誰も住んでいなくて」ということで相談を頂くこともあります。

ーーー他に貸したしたり、前のようにイベントをやったりはしないんですか?

めちゃくちゃやりたいですね。イベントの会場貸しもしているんです。磐梯町の町民だったら無償です。今後プロモーションしたい部分ですね。

移住定住の相談について

空き家対策は、同じ物件が二度と売りに出ないことが目標でもあるんです。

いかに長く住めるかをしっかり考えて頂きたいので、どれぐらいの意思で移住したいのか、どのぐらいのスパンで生活を考えているのかは、しっかり確認させて頂いています。

移住定住の相談は、毎回、「雪は大丈夫ですか?」「車の運転は出来ますか?」ということはしっかり確認させて頂いています。

ーーー磐梯町の雪は会津地方に住んでいる人でも大変そうですね。

大変ですよ。気を抜いたら、車が埋もれるぐらい雪が積もります。車と同じぐらいの高さの雪が降って、車が見えなくなる、それを掘り起こす、そういう世界です。

それでも、住みたいという人がいらっしゃれば、「覚悟して来てください」と。

広域での空き家対策に向けて

空き家バンクの推進では、これまでの啓蒙活動が多少、実を結んで、去年の8月に2件の登録があり、2件とも登録後3ヶ月もたたずに売れました。

空き家バンクは0件に戻ってしまったので、また掘り起こしを行っています。磐梯町にある空き家だと思われる物件が約120軒程度と、物件数が本当に少ないんです。

ーーー磐梯町の地域おこし協力隊は3年間やる予定なのですか?

はい、あと1年2ヶ月あるので。卒業後はしっかりと磐梯町で空き家対策や移住定住の仕事をしようと考えています。

ーーー会津若松市の「隠れ家ゲストハウス」はどうなるのですか?

2023年6月で閉店です。いったん区切りをつけます。もったいなくもあるんですけど。

お店を継ぎたいという方はいらっしゃるので、場所は残るかもしれません。ただ、オーナーは自分ではなくなって、自分が週末にお店に立つことはなくなります。

ーーー会津若松市でこれから何かをやる予定はありますか?

何かお店をやりたいとは思っています。磐梯町は結婚を期に来た町なので、この町の魅力とか、どういう面白い人がいるかという部分を、日々楽しんでいる最中なんです。

みんなに「磐梯町でゲストハウスをやるの?」って言われるんです。今のところやる予定はないです。やるとしても町のことを知り尽くして、起業とか諸々落ち着いた10年後ぐらいになるのかなと思います。

会津若松市は、初めて会津というエリアに来た町でもあるので、好きなお店や場所もたくさんあるので、観光業のことがやりたいです。

2020年12月にいったん止まってしまった物件もまだその場にあるので、できればまたそこも使いたいなと思っています。

地域おこし協力隊卒業後は、磐梯町で空き家対策や移住定住の仕事で起業して、ちょっと落ち着いてから考えられたらいいかなと思っています。

空き家の仕事も、磐梯町だけだとあんまり数がないので、近隣の会津若松市や猪苗代町、北塩原村のように広域で出来るといいなと思っています。

移住希望者や磐梯町に興味を持ってくださる方へのメッセージ

地方移住って、不便がすごく楽しいというか、一番いい部分だと思います。

負の部分でものを見るのではなくて、不便だから楽しい、不便だからいいよね、と面白がれる方には、ものすごく会津エリアは向いていると思います。

お店がないから嫌だ、でなくて、お店がないならお店を作ってみよう。雪がすごく降るから嫌だ、でなくて、雪が降るならウィンタースポーツを楽しんでみよう。

不便を楽しむ方法は星の数ほどあると思うので、それを自分で見つけたり、妄想してみたり、出来る人は会津に来たら、飽きないでずっと住めるかなと思います。

そういう風に感じられる人にどんどん来て欲しいなと思います。

ABOUT ME
アバター画像
古川恵子
1981年喜多方市出身。福島大学卒。2004年から東京都在住。あいづっぺでぃあには運営側で関わりつつ、ライターとしても活動しています。 普段は自営業主様、小規模事業者様向けに、ホームページ制作、ワードプレス講座、情報発信事業などを行っています。