取材記事

“好きなことができる場所”を求めてたどり着いた会津【会津新富座 齋藤成徳さん】

今回あいづっぺでぃあが訪ねたのは、東京都から会津美里町に移住し、約50年間閉館していた映画館「会津新富座」の管理・運営を行なっている齋藤成徳さん。

齋藤さんは会津新富座で、自身のコレクションである映画ポスターの展示やホールの貸し出しなどをしつつ、新富座を地域コミュニティの核となる場にするための活動なども行なっています。

東京出身の齋藤さんがなぜ会津への移住を決めたのか、そしてなぜ会津新富座に目をつけたのか。さらには、サブカルチャーを通じた町おこしへの思いや今後の展望などについても、たっぷりとお話を伺いました。

50年もの間、閉館していた会津新富座の再興に向けて

会津新富座の外観。どこか昭和レトロな雰囲気がただよっているのが印象的だ。

ーーー会津新富座では、どのようなことをされているのですか?

会津新富座では映画ポスターの展示と、もともと映画を上映していたホールの貸し出しなどを行なっています。あと、会津新富座は大正5年創業の元映画館ということで、ゆくゆくは映画も観られるようにすべく動いているところです。

ちなみに去年はこのほかに、県内の老舗映画館をまわるバスツアーも実施しました。福島ってすごいところで、浜通り・中通り・会津に1つずつ、大正時代につくられた映画館があるんです。それらの映画館をまわって、最後は映画を観て帰るというツアーでした。

コロナ禍ということもあり、人数制限をしながら実施したんですけど、予想を超える応募数に「こんなにも興味を持ってくれる方々がいるんだ」と驚きましたね。とても好評だったので、今年も実施する予定です。

それと昨年は、会津美里町役場と協力して、映画の上映会も実施しました。私がコレクターになるきっかけにもなった「絶唱」という映画を上映したのですが、郡山市にいらっしゃる看板絵師さんに本格的な看板をいただいて、とても有意義な時間になりました。

あとは、コレクションしている映画ポスターを無料で貸し出しているので、会津地域の各地でポスター展を開くこともあります。コレクション自体は4,000点以上あるので、会場が押さえられれば今年もやりたいです。

会津若松市内で開催された映画ポスター展のようす。すべて齋藤さんのコレクションで、1度に数百枚のポスターが展示される。

ーーーポスター展などを実施しての反響はいかがでしたか?

何百枚とポスターを飾るので、皆さんびっくりしていましたね。当時を知っている世代にとっては懐かしいし、知らない世代にとっては新鮮なんだと思います。だから、どんどんポスターを活用してもらえたら嬉しいです。

ーーーでは、約50年もの間、閉館していた会津新富座に目をつけたのはどうしてですか?

コレクションしてきたポスターを広げられる部屋を探していたとき、開催したポスター展を通じて会津美里町役場の方からお声がけいただいたのがきっかけです。

約50年もの間、閉館してたのにも関わらず建物がそのまま残っているのは奇跡ですし、建物内を見せてもらったら「このままにしておくのはもったいないな」とも感じて。

コレクションのポスターをここに飾って、ゆくゆくは映画館としても復活できればいいかなと思ったので、管理や運営を任せてもらいました。

長い間、閉館していたから埃もすごかったし、最初は電気すら点かなかった。だから、懐中電灯を持って掃除するようなところから始まったんです。

でも、これもすべて私が好きだからやっていることなんですよね。定年退職をして、ずっと倉庫に預けていたコレクションがどのくらいあるのか把握したいし、広げて見てみたいという願望がずっとあったので、いいところが見つかったなと。

とはいえ、1人で運営・管理をするのには限界があります。だから、私と同じように会津新富座をなんとかしようとしている方々が集まって、みんなで知恵を出し合えるようにと、約半年前に後援会も立ち上がったんです。

会津新富座の館内にも、昭和時代の映画ポスターがびっしり飾られている。

ーーー齋藤さんご自身は、映画が好きなんですか?それとも、映画ポスターが好きなんですか?

もともと好きなのは映画でしょうね。ポスターのコレクションはあとから付いてきました。昔は電柱や八百屋さんの店先などにポスターが貼ってあって、映画の公開が終わると剥がして、次のやつを貼るというのが普通でした。

だから、言えば古いポスターをもらえたんです。当初は自分が見たい映画のポスターだけを集めていましたが、だんだん見境がなくなって現在に至ります(笑)

今はコンピューターで簡単にポスターを作れるけれど、昔は版下を汲んで1枚ずつ手作業で作っていたんです。しかも、映画が始まる前にポスターを作る必要があるので、台本を読んである程度イメージを膨らませて、映画が完成する前にポスターを仕上げなければならなかった。

それにしてはクオリティが高くて、1つ1つがアートですよね。でも、当時はそれが当たり前で、映画が終わったら破いて捨てられる運命にあったから、当時のポスターってあまり残っていないんです。

だからもう、出演者に似てる似てないじゃなくて、手書きだからこそ感じられる独特の味わいがあるというか。その時代のポスターはどこか訴えかけてくるものがあるんですよね。

東京から、縁もゆかりもない会津に移住した理由

映写室には、使われなくなった映写機が閉館当時のまま残されている。

ーーーそもそも、どうして齋藤さんは移住先に会津を選んだのですか?

ずっと東京で仕事をしていましたが、定年退職を機に終活も兼ねてコレクションの整理ができる場所を探していたところ、全国のなかから会津に行き着きました。

正直、はじめはコレクション整理のために物件を借りるだけのつもりだったので、移住する予定はなかったんです。けれど、地域の方々が私のコレクションに興味を持ってくれて、それがポスター展の開催などに繋がったので、思い切って移住することにしました。

もちろん、移住に対してのハードルがなかったといえば嘘になりますが、膨大な量のコレクションを広げられるだけの空間があるのは田舎ならでは。コレクター仲間に自慢したいくらいの空間が作れたので、移住して後悔はありません。

それに今の時代は我々が若い頃に比べて、漫画やアニメなどのサブカルチャーが日本の文化といわれるくらいに浸透しています。だからこそ、サブカルチャーが町の再生にも一役買ってくれるんじゃないかと思っていて。

漫画やアニメなど、サブカルチャー関連のコレクターを積極的に町に呼べば空き家対策にもなるし、たとえばジャンル別・アイテム別にコレクションの展示をしたらちょっとした観光名所にもなる。

そういう願いも込めて、ここ一帯をサブカルチャー化したら?という話を美里町に提案しているんです。私でよかったら、仲間をたくさん連れてきますから。

ーーー食べ物が美味しくて、景色が良くて、治安がいいところは日本全国にたくさんありますが、そのなかでも会津を選んでもらうためには、そのような特色を打ち出して行くことが大切ですね。

そう思います。特にコレクターたちはこういう空間を探しているし、都会はなんでもあって便利だけど、都会から地方に行きたいって言っている人は本当にたくさんいます。

ただ、きっかけとか、接着剤になってくれるような人に巡り合っていないだけだと思うんです。そこを私がなんとかできればと思っています。

かつて映画を上映していた大ホール。齋藤さん自作のスクリーンのほか、スピーカーを12個導入しており、映像への没入感も抜群だ。

ーーー齋藤さん自身、今後は町のサブカルチャー化というか、もっとここに人が集まるような働きかけを続けていくのですか?

そうですね。今も仲間や町などに対して「ここでなにか一緒にやらないか?」って働きかけているところです。

会津新富座に遊びに来てくれる方のなかでも、いろいろな人がいるんですよ。最初はコレクターであることを隠しているけど、ここの展示品を見て、安心してカミングアウトしてくれるんです。

そうすると、こちらがびっくりするくらいのコレクターがいることもあって。彼らも今は自分だけの趣味として楽しんでいるけれど、いつかどこかで堂々とコレクションを広げ、じっくり眺めてみたいなって思っているんですよね。

そういった方々を町に呼んで、地域の皆さんにも楽しんでもらえる仕組みを整えたら面白くなると思いませんか?

ーーーでは、会津新富座の今後の展望についてはいかがでしょうか?

映画館としての会津新富座に興味を持ち、集まってくれる方が多いので、自治体やメディアなども巻き込みながら、皆さんの思いをいろいろな形で表現できたらと思っています。

映画館としての復活はもちろんですが、映画館にとどまらず、ホールを使ってイベントをやりたいっていうなら貸しますし。それにスクリーンも自作したので、今の時点でも映画館らしいことはできますよ。

そのためにも私が毎日シャッターをあけて、ポスターを見てもらったり、お茶を飲んでもらったりと、皆さんがいつでも気軽に立ち寄れる場所にしていきたいですね。

ーーー齋藤さん、ありがとうございました。

【会津新富座】
・住所:〒969-6265 福島県大沼郡会津美里町字御蔵南372-4
・電話:0242-93-5768
・携帯:090-3366-4025
・メール:aizushintomiza@bo2.so-net.ne.jp
・Facebook:https://www.facebook.com/shintomiza/

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mayu watanabe
愛犬と音楽をこよなく愛するフリーライター。 はじめて就職した会社でセールスライター経験を積んだのち、2018年に独立。ウィンタースポーツ・ローカル・旅行関連など幅広いジャンルの執筆を行なう。趣味はゴルフと1人カラオケ。