今回ご紹介するのは
磐梯酒造の5代目蔵元の桑原大さんです。
磐梯酒造は創業明治23年(1890年)で2020年で130周年を迎えた老舗酒蔵さんです。
磐梯酒造の特徴は磐梯町に根付いた酒造りです。
5代目の桑原さんが携わってからは「和醸良酒」を社訓として現在酒造りに取り組まれています。
「和醸良酒」とは一体どういう意味が込められているのでしょうか?
今回は桑原さんに酒造りへのこだわり、磐梯町への思いをお話ししていただきました。
磐梯にこだわった磐梯を味わえる日本酒
ーーー現在はどんなお酒を販売していますか?
桑原さん:大きく分けて3つのブランド酒を提供しています。
そのブランドの中で純米吟醸、純米大吟醸、特別純米などの様々な精米歩合が分かれます。
1つ目は、磐梯山です。
磐梯山は磐梯酒造の代表となる日本酒で創業当時からある第一ブランドです。
2つ目は、乗丹坊です。
乗丹坊は磐梯山の上位ブランドとして約5年前に作られました。
特徴としては、純米以上の特別純米、純米吟醸、純米大吟醸の3種類を冷蔵保存して販売しています。
お米は全て磐梯町産のみ使用することにこだわっています。
3つ目は、会津桜です。
会津桜は会津産古代米を原料として、黒米由来の自然色によって全国でも珍しい桜色のお酒となっています。
そのほかにもいくつかお酒があります。
その中でも最近では、日本酒ベースのりんごカクテル「磐梯山 りんご酒」が人気でふるさと納税の返礼品でも取り扱って頂いています。
ーーーどこで販売することが多いですか?
桑原さん:福島県内はもちろんですが、東京等でも販売しています。
東京での販売は売れるのは売れるのですが、価格が安いので良いお酒を適正な価格で販売することにシフトしようと思っています。
その理由としては、蔵の規模は小さいのであまり宣伝広告費をかけることができていないのが現状です。
なので、お酒の質にこだわりたいと思っています。
良いお酒を作ってお客様に口コミしてもらえるように販売しています。
ーーー日本酒のお米と食用のお米の違いはありますか?
桑原さん:食用のお米は甘くて粘り気が強いです。
日本酒のお米は外硬内軟といって外側が硬くて、内側が軟らかく粒が大きいさばけの良いお米が向いています。
また、タンパク質が少ないとより良いです。
なぜかというと日本酒においてタンパク質から生まれるアミノ酸は雑味となってしまうからです。
ーーー磐梯のお水の特徴はありますか?
桑原さん:磐梯のお水は軟水でミネラルが少ないのが特徴です。
ミネラルが少ないとお酒を作る際の酵母にとっては生活がしづらいのですが、逆にストレスを与えることで良い香りを出します。
「和醸良酒」磐梯酒造が大切にする酒造りの基本
ーーー磐梯酒造のお酒造りのこだわりを教えてください。
桑原さん:こだわりは2つあります。
1つ目は、磐梯酒造の酒造りの基本は「磐梯にこだわった酒」を作ることです。
酒造は全国で2000社以上、福島県内で50社程あり、その中で戦うとネームバリューで負けてしまうと思っています。
なので磐梯のお米、磐梯の水を使って、磐梯の人間が作るということは意識しています。
例えば、「磐梯山 りんご酒」では磐梯町で生産されたりんご果汁を使いました。
「清酒 磐梯山」にりんご果汁を加えたこのカクテルを開発する時には、磐梯町にいる日本バーテンダー協会の理事の方に監修をして頂きました。
ーーー磐梯酒造の社訓である「和醸良酒」
桑原さん:2つ目は「和醸良酒」(わじょうりょうしゅ)という社訓です。
この言葉は「極寒の中、磐梯山のふもとで醸した良酒を召し上がったお客様に和の時間をお届けしたい。さかずき一杯を召し上がるお客様を考えて作る」という意味を表しています。
我々のような酒造では工程で一度に大量のお酒を作ることがあります。
ですが、召し上がるお客様はさかずき一杯のお酒を味わうので、飲まれるお客様のことを考えて酒造りをしています。
これは会社全体で意識しています。
元々は社訓はありませんでしたが、会社としての方針がないとお客様も働いてくれている社員もついてきてくれないと思い、私が掲げた社訓です。
磐梯町は人を受け入れる町
ーーー磐梯町の好きなところはありますか?
桑原さん:磐梯町は皆を受け入れる土壌があるところが魅力だと思います。
具体的には、磐梯町にある七ツ森ペンション村です。
七ツ森ペンション村ができた当初に県外の人がペンション村で商売を始めた時でも、磐梯の人は受け入れて皆で泊まりに行こうという風潮がありました。
会津には「会津の3なき」という文化があります。
①初めて会津に来た人は よそ者に対する会津人のとっつきにくさに泣き
②やがて会津での生活に慣れてくると温かな心と人情に触れて泣き
③そして会津を去る時には離れがたくて三度目の涙を流す
ですが磐梯町は、1泣きがなく最初から受け入れる文化があります。
なので、私自身も色々な方と関わりながらお酒造りをしたいと思っています。
今後の展望
ーーー今後の展望はありますか?
桑原さん:磐梯に根ざした良い日本酒ブランドを確立することです。
理由は、日本酒自体の消費数量は毎年減っていることや酒屋が減っている現状があるので安売りをするのではなく、地域に密着した良い酒を適正な価格で届けることを今後進めていきたいと思っています。