『美味い。』…200年以上、お客様の声に応え続ける伝統の甘味は、暖簾を守る力の源。若者・よそ者だから知りたい、地域愛の形。

赤べこという縁起物が福島県の伝統工芸品であることは有名だと思います。
発祥の地をもう少し具体的な地名で言うと、福島県会津地方にある柳津町という所。
実はこの柳津町、伝統和菓子の発祥の地でもあるのです。

あわまんじゅう

これが「元祖」あわまんじゅう。奥にあるのはくりまんじゅうでこちらも頬が落ちるほどの一品。

見てください。この金色に輝く艶やかな和菓子!
粟(あわ)の粒が光を乱反射し、手にとって動かすとキラキラと色めきます。

そんなあわまんじゅうを、柳津で作り続けて200年のあわまんじゅうの元祖「岩井屋」様を取材しました。

取材を通し、社長の沼澤様は伝統和菓子を作り続ける大変さを赤裸々に語ってくださいました。
その並々ならぬ努力の裏には、誰よりもお客様を大切に思う、女将と社長の強い絆と覚悟を垣間見ることが出来ました。

―――今日はよろしくお願いします!

沼澤社長(以下沼):
よろしくお願いします!
まあ、まずはこちらをどうぞお召し上がりください♪
(と、入店1分以内にあわまんじゅうとくりまんじゅうが目の前に。そして1秒以内に口の中に・・・。)

さらっとした食感が口の中に広がり、粟がこしあんの甘さを程よく中和してくれます。蒸したてなので、噛むと程よくもっちりしており、甘みと食感の絶妙なハーモニーを堪能することが出来ます。

―――めちゃくちゃ美味しいです!

沼:
そう?ありがとう。
しかしよくこんな遠くまで来たね!

―――はい!車で来ればそれほど遠くないので。会津柳津駅も近いですし。

沼:
そうなんだよね。
でも、最近はお客さんの数も少なくなりましたよ。

ほら、ここら辺の田舎は二次交通、三次交通が整備されてないでしょう?
昔はバスツアーで東京から直接来て頂いたりして、それが一番の集客になったですんが、最近はそんなツアー少なくてね。
集客が難しくて、困ってるんですよ。

岩井屋店主、沼澤様。お店の課題を教えていただきつつも、終始笑いの絶えない明るい取材が続く。

伝統の甘味が失われてしまうかもしれない。

―――それはとても大変ですね・・・。こちらのお店は開業してどのくらいになるんですか?

沼:
だいたい200年くらいになります。(そんなさらりとおっしゃる年月なのでしょうか)。
私で5代目、10年ほど前から代表を務めています。
ピークは平成4年ですね。そのころが会津坂下のピークです。
今はだいぶ寂しい。

―――なかなか厳しいですね・・・。繁忙期はあるんですか?

沼:
繁忙期は10月下旬から12月にかけてです。
勤労感謝の日など、特に売り上げが上がりますね。
あとは何より紅葉ですね。
繁忙期シーズン以外は、東京に行っています。
日本橋にある福島県物産館でイベント販売するんです。
でも『なまもの』ですから、日持ちしないので沢山は持っていくことはできません。

―――なるほど。インターネットでの販売はされているのですか?

沼:
インターネットでも販売してます。
ですが基本的に、直販がほとんどですね。
また、道の駅安達に直販店を出しています。
そもそも、あわまんじゅうの需要はお参りで多かったんです。
近くに、有名なお寺がありましてね。

あわまんじゅうの歴史、お店の歴史を取材。店内は落ち着いた雰囲気でおもちの蒸した香りに包まれる。

あわまんじゅうの起源<災いに『あわ』ないように>

(ここで、あわまんじゅうの起源と言われている一説をご紹介します。)

1818年(文政元年)6月15日に柳津で大火が発生。
日本三代虚空蔵の一つである円蔵寺の堂塔伽藍や門前の集落が焼けてしまいました。
当時の住職である喝岩和尚は、幕府や会津藩等と掛け合い資金を調達して復興に取り組み、1829年(文政12年)8月には円蔵寺本堂の再建に到りました。その際に喝岩和尚が「もう二度と」このような災難に『あわ』ないようにとの願いを込めて、当時多く生産されていた粟を使った饅頭を奉納することを思い立ち、門前の菓子職人に作らせたのが始まりと伝えられています。

-引用 wikipedia-https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%9F%E9%A5%85%E9%A0%AD

沼:
そのお参り(旅行)帰りに、饅頭をまとめ買いする需要が多かったんですよ。
最近は、そんな文化も廃れてきていて、お参り自体が少なくなりましたね。
お参りはご高齢の方も多いでしょう?
足腰が弱くなるとなかなかこちらまで来れないと聞きます。
たくさんは持って帰れないので、一人が買う量も減りましたね。
昔は団体バスで来る人が多かったんですが、今はバスじゃなく、ワゴン車。
乗る人数自体が違います。

こういう観光客向けのお土産産業は天変地異に弱いんです。
例えば中越地震。
この地震以降、めっきりお客様は減ってしまいました。

だからリピーターのお客様を大切にしたいと思っています。
これが生涯の仕事ですからね。

店内には所狭しとおいしそうなあわまんじゅうのセットが並ぶ。1個110円(税込)。安い!

―――なかなか難しい課題を抱えてらっしゃるんですね。販路を拡大させる計画はおありなのでしょうか?

沼:
販路は拡大したいんですが、なにせ『なまもの』ですからね。
それに、全てが手作業で作っているんですよ。
だから、一度に作れる数にも限りがあるんです。

売上拡大よりも、心を込めた手作業にこだわる

―――え、全部手作業なんですか!?

沼:
そうです。機械ではなかなかできないですからね。

―――販路の拡大が難しいならば、新商品の開発とかはいかがですか?

沼:
新商品を作りたくても手作りだからなかなかね・・・。
全部が手作りで、その作業に追われていると、なかなか新商品を開発する時間自体が足りないんですよ。
(取材の本旨とズレてしまうので割愛しますが、この後、どうすれば新商品が開発できるか、など話し合いました。すべてが手作業ということに取材班一同驚きを隠せません。そんな尊い食べ物だったとは。。。)

でもこうやって若い人が来てくれると元気になります。
自分もがんばらなくちゃってなるね!

―――そうおっしゃっていただけて私たちも嬉しいです!

お客様の「美味い」という言葉に応え続けたい

沼:
しかし、どんなに経営が大変でも続ける原動力はなんでしょうか?

それはお客様の「美味い」という、その言葉に尽きますね。
もちろん単純に今までやってきたから続けてきたというのもあるし、売れてたから続けてきたというのもあります。
でも、やっぱり今まで買ってくれたお客様がいますから。
その声には応え続けたいと思っています。

―――応援しています!本日はありがとうございました!

(実は岩井屋様、平成25年に火災に見舞われ当時の趣深い店舗は全焼してしまいました。しかし。そこは店主の底力1年半後には向かいの空き店舗を間借りし、お店を再開しました。)

(最後に、あわまんじゅうの作り方を見せていただきました。)

手元にはおちょこのような型が(映っておらず申し訳ないです…。)一つ一つリズミカルに作られていく。

こしあんを粟と餅米を混ぜた生地で包んできます。包む型がおちょこのような可愛らしい型で、そのひとつひとつを丁寧に詰めるという昔ながらの製法。

女将さん曰く、この型に詰める作業は機械ではできないと言います。
粟という食材がとても繊細で、機械を使ってしまうと粒が潰れてしまい食感が失われてしまうそう。
「作れる個数にも限界があるけれど、それでも真心込めて作っていきたい。」とおっしゃった女将の言葉が身に染みますした。

厨房を取材。おかみさんより手作りであることの大切を語っていただいた。

「五感で感じる体験」をもう一度

現代社会、売り上げアップのためなら何でも効率化、と考えてしまいます。
しかし、そもそもあわまんじゅうは縁起物。
災難に「あわ」ないようにと願いを込める和菓子を、やすやすと機械に頼って作るわけにはいきません。
ご夫婦の思いを尊重し、少しでもお手伝いできることは何でしょう。

一つは、実際に訪れて食べてみることでしょう。
その地を訪れるからこそ分かる歴史、生産者の笑顔、商品への想い、香り。

テクノロジーの発展により淘汰されつつある「五感で感じる体験」という文化を、今一度見直す努力こそ、よそ者・若者に求められていることなのではないでしょうか。

皆様もぜひ、一度会津柳津町の岩井屋様を訪れてみてください。
その小さなおまんじゅうには、ただ甘いだけじゃない、他では味わえないコクのあるこしあんが、ギッシリ詰まっているのですから。

お店の前にて記念撮影。若々しいご夫婦で営まれる素敵なお店でした!これからも応援しています!

岩井屋 詳細情報

所在地    福島県河沼郡柳津町寺家町甲147
電話番号   0241-42-2107
ホームページ http://www.office-web.jp/iwaiya/

営業時間   9時〜18時 (冬季は17時まで)
定休日    不定休
価格     あわまんじゅう 110 円/個
       くりまんじゅう 160 円/個
       あゆもなか   120 円/個(いずれも税込 2020.1月時点)

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大隅隆雄